NSTEMIであっても緊急にCAGを行う必要がない。2018年JACC。ICTUS研究10年追跡の結果から。

JACC 2017 vol 69. No.15; 1883-93 【背景】NSTEMIの患者に対してカテーテル検査及び治療をどのタイミングで行うか、ESCガイドラインにはリスク別に4段階に別れています。このガイドラインは4つの代表的試験に対するメタ解析の結果によって構成されており…

ブランチ先生カンファ;セロネガティブRA

久しぶりの更新になります。 当院で研修医向けて行っているカンファレンス、Dr.ブランチの総合診療、をアップします。できるだけ正確に訳しているつもりですが、本内容に関する疑問点、違和感等々は責任は全て私にあり、ブランチ先生にはないことを確認させ…

血圧コントロールと出血イベント J-RHYTHMレジストリーからの適正血圧の見解

【研究の背景】 2016年にJournal of american heart associationに報告された日本人心房細動コホート J-RHYTHMレジストリーからの報告です。抗凝固療法で気を付けなければならない出血イベント、特に脳出血に関しては日本人は元々多い民族ですので、関心の高…

AF burdenを追加した心房細動患者の塞栓症予測能

【研究の背景】 心房細動に対して脳塞栓症を含めた全身塞栓症は絶対に発生をさけたい事象です。リスクスコアとしてCHADS2 scoreとCHA2DS2-VASc scoreがありますが、先行性、簡便性から前者が汎用されていると思います。一方で慢性、発作性と心房細動はその表…

AMIの除外診断方法;高感度トロポニンとH-FABPのコンビネーションアプローチ

BMC (2016) 16:34 【研究の背景】 非ST上昇型心筋梗塞 (NSTEMI)の初期診断は心電図変化が明確でないことから容易ではありません。一方バイオマーカーは定量的評価ができるため非専門医でも使いやすい特徴があるため、救急外来で汎用されています。高感度トロ…

非ST上昇型心筋梗塞を疑う患者に対する高感度トロポニンTの効能。特に主訴別での検討。

【リサーチクエスチョン】 “胸部症状”という主訴で救急室に来院した患者に高感度トロポニンT (hs-cTnT)が鑑別診断に、どの程度有効か? 【方法】 @ 試験デザイン ドイツの1施設で行われた観察研究です。6ヶ月の間、救急室に来院した連続3327名を対象に行わ…

IMPROVE-IT

【リサーチクエスチョン】 シンバスタチンにエゼジミブを加えることでACS患者のイベントがシンバスタチン単独に比べていいか? 【方法】 @ 試験デザイン randomized, double blind, placebo-controlled. 2005-2010年の間米国、カナダほか39か国の1147施設で…

井上の読み方320160927

非劣性試験についてお話しします。新規の薬物開発は困難を極めています。開発に時間と労力を費やしても10年でパテントが切れてしまいジェネリック医薬品にとってかわられたんでは・・・・。また効果を実証するためにはRCT; randamized control trialが理想…

ヘパリンブリッジ

【リサーチクエスチョン】 心房細動を基礎疾患にもつ患者に対する手術でヘパリンブリッジを必要とするか? 【方法】 @ 試験デザイン randomized, double blind, placebo-controlled. 2009-2014年の間米国、カナダの108施設で1884名の患者で行われました。 @…

井上の読み方2;20160904

ではメソッドの読み込みにうつりましょう。 1)研究デザインをまず見極めます。Randomized control trial (RCT)なのか、観察研究なのか、ケースコントロールなのか。リサーチクエスチョンに合っているかどうかを踏まえ検討します。薬物の効果をみるためには…

COPERNICS

【背景】β遮断薬は現在の心不全治療の主流になり軽度心不全で、その位置は確立されています。 【Reserach Question】(研究開始当時)β遮断薬の心不全治療に効果的であるという試験は軽度から中程度心不全までで重症心不全患者を対象とした試験はなかった。…

井上の読み方1;20160808

20160809 ◼️ 最初に行うこと;4項目。 1)タイトルは論文の概要を読み取るために著者は一苦労しています。アブストラクトより短いこの一文で大まかな内容がわかるように仕上げております。 2)続いて著者一人一人の名前に目を通しましょう。1、2番目、…

冠動脈CTA検査と負荷心筋シンチなどの機能的検査の比較

【背景】胸痛を訴える患者さんに対して、冠動脈疾患を有するか、否かを判定することは循環器医のみならず内科医としてとても重要です。見逃すと死亡率30%の心筋梗塞になりかねません。Diamond & Forresterの古典的な問診(すなわち性別・年齢・典型的胸痛…

V-AECMO症例の予後予測アルゴリズムーSAVE scoreの意義ー

【背景】循環器領域で使用するECMOはPCPS (percutaneus cardiopulmonary system)という呼称のほうが一般的なようです。ただし正確にはV-A ECMOといいます。Veno-Atrial ECMOです。アクセスする血管でV-V ECMOなどもあるわけです。心肺停止の際、最終手段とし…

分岐部病変閉塞予測因子の検討 JACC 2013から。

Journal of the American College of Cardiology 2013;62:1654-9 【背景】PCI stentingにおいて病変から分岐している血管、いわゆる側枝 (side branch)の保護には毎回工夫を強いられます。過去のデータからmain branchの閉塞は予後に影響するが、side branch…

拡張型心不全に対するアルドステロン受容体拮抗薬の効果JAMA

【背景】心不全の50%以上を占める、拡張型心不全症例には一定の薬物投与内容が決定しておりませんでした。 【Reserch Questions】 ドイツとオーストリアから10施設、422人の拡張型心不全症例に対するアルドステロン受容体拮抗薬の効果を確かめることを目的と…

Angiotensin-Neprilysin inhibitrorー新規心不全治療薬 NEJM2014

ARB以来の心不全患者で予後を改善させる新薬の登場を示唆する論文です。ネプリライシンには、ナトリウム利尿ペプチド、ブラジキニン、アドレノメデュリンといった内因性血管作動性ペプチドを分解する作用があり、ネプリライシンの阻害により、これらの物質の…

FFR vs IVUS retropspective single center study, 2010年JACC interventionsから。

著者所属名にはソウルとカリフォルニアの施設名がありますが、著者は全員韓国人です。Methodのところにどこの患者が記載がありません。単施設、後ろ向き解析のように感じます。 【Research Question】IVUS > 4mm2カットオフ値は予後良好であることから確立…

iFRとFFR; ADISE studyから。

Am Heart J 2014;168:739-48 iFRの理念を打ち出したJustin DaviesをPIとした多国籍の方々によって検討された論文です。 【Reseach Question】 医師によってiFR, FFRの同時測定をする中で 1)FFRのカットオフ値0.8がiFRでどの程度の数値になるかを評価するこ…

Drug coating balloonのPROBE試験結果 Lancetから。

Lancet 2013; 381: 461–67 ドイツのグループからの報告です。 【Research Questions】 DES留置後の再狭窄病変に対して、DES再度留置、DCB対応、もしくはPOBA のいずれがよいか。 【研究デザイン】 PROBE法を用いてます。デバイスの選択は術者・患者ともわか…

偽膜性腸炎の診断

院内で抗菌薬の管理業務もしていますので、感染症診療にも興味をもって診療しております。院内感染の問題としても注目される偽膜性腸炎; clostridium defficile infectionの簡易・迅速診断法として便中白血球の有用性を調べております。 その観点でJAMAのSys…

プラスグレルとクロピドグレル

新規抗血小板剤であるプラスグレル(エフィエント)が販売されました。2年前に参加した日本循環器学会で久しぶりにPositive resulutが得られた素晴らしい大規模臨床研究だと紹介されていました。 著者はBringham Medical Women's Hospitalのチームが主体で…

日本人女性におけるpravastatinの有効性

Circulation 2008;117:494-502 【私見】知り合いの先生からご質問をいただきました。そのため文献を調べてみました。 患者様は50歳代女性(閉経済み)。既往歴なし。家族歴は母親が高コレステロール血症。心臓病なし。健康診断を当院でお受けになりました…

GRACE score のACS疑いを含めた予後精度

Am J Cardiol 2013; 111:202-207 【目的】急性冠症候群 (ACS)の診断は、詳細な問診・心電図やバイオマーカーなどの検査を用いても依然難しいものです。本論文では確定的ACSに比し、ACS疑いの症例に対する治療を含めたアプローチで予後に影響を及ぼしていない…

GRACE score

Arch Intern Med 2003; 163: 2345-2353 【私見】 現時点で知られている急性冠症候群の予後予測スコアにGRACE score, PERSUIDE score, TIMI scoreがあります。中でも最も予測性能が高いと考えられるGRACE scoreの論文です。STEMI郡ではprimary PCI; 16.1%, el…

拡張型心筋症における予後因子としての心筋MRIの位置づけ

Gulati A et al, JAMA 2013 vol 309, No.9 896-908 【私見】 拡張型心筋症 (DCM)は2500人に1人の割合でみられる心筋障害で心不全や突然死の原因になりうるため治療できうる不整脈に対する処置、つまりICD (implantable cardiac defibliration)をいつ植え込む…

New oral anticoagulant (NOAC) のレビュー

Thromb Haemost 2014; 111: 798-807 【私見】 70歳未満であればワーファリンよりもNOAC(Edoxaban 60mg/dayの場合。30mg/dayは該当せず)のほうが経済的観念以外の点で優れていることは明白です。脳出血がこれだけ抑えられている理由にはXaのみ、thrombin…

高感度トロポニンTの使用法

Arch Intern Med. 2012;172(16):1211-1218. 私見;高感度トロポニンT (hsTnT)がNEJMにその診断効率の高さ(ROC解析)が報告されたが、現場ではまだその使用法に浸透性を感じません。本論文は現場でどのように使用するか一つのヒントになる研究です。 【背景】…

腎不全とTroponin T

Troponin T levels in patients with ACS with or without renal dysfunction NEJM 2002; 346:2047-52 Aviles RJ et.al 背景; GUSTO IV trial のデータベースを利用した前向き観察研究。GP IIB/IIIa inhibitorを用いたdouble blind randomaized studyでエン…