拡張型心不全に対するアルドステロン受容体拮抗薬の効果JAMA
【背景】心不全の50%以上を占める、拡張型心不全症例には一定の薬物投与内容が決定しておりませんでした。
【Reserch Questions】
ドイツとオーストリアから10施設、422人の拡張型心不全症例に対するアルドステロン受容体拮抗薬の効果を確かめることを目的としております。
【Method】
多施設、ランダム化、前向き、二重盲研究です。心不全 (NHYA II かIIIで駆出率 50%以上に保たれている)で救急搬送された422症例(平均年齢67才、52%女性)の患者さんをアルドステロン受容体拮抗薬服用群とプラセボ群に分け1年間追跡したのち心エコー評価;E/e'と最大運動能力;peak VO2を比較しました。
ランダム化にはPocock and Simon法が採用されています。これはエントリーされていくたびに患者背景にばらつきが生じないよう、重みづけを行いながら均等に割り付けする方法です。動的割り付け法ともいいます。
Entry基準;50才以上でNHYA II かIIIで駆出率 50%以上に保たれている慢性心不全症例。エコー診断でGrade I以上の拡張能障害を有すか心房細動を起こしており、かつ最大運動能=分時最大酸素消費量; peak VO2が25 mL.kg/min以下であることとしています。
除外基準をみてみますが、冠動脈疾患、過去3か月以内のMI, CABG施行症例、肺疾患 (PFTで定義)、重度の肥満、クレアチニン 1.8 mg/dL以上の腎不全、高カリウム血症、IDDMなどが含まれています。
【評価項目】
いずれも独立したラボで患者情報をわからない状態で、きちんとトレーニングを受けた技師によって評価されている、と記載されています。
心エコー評価
分時最大酸素消費量; peak VO2:20 Wの仕事量からエルゴメーターを開始し2分毎, 20Wずつ負荷を増量していきます。換気量・酸素摂取量・心拍数を計測します。最大酸素消費量はV-Slope法で産すつされた嫌気閾値における最大量として定義しています。
【サンプルサイズ設定】
現実的に治療郡は改善しプラセボ群は悪化していくことが想定されます。そこでパイロット研究を行っていおりますがVO2のばらつき(SD)は5 mL/min/kgでした。一方、E/e'は4でした。
そこで15%改善、悪化するとみたてるとE/e'は0.15 x 4 x =1.2の平均変化量と推測されます。加えてパイロット研究からSDは3と設定されました。以上からSD 0.4, αエラー 0.05, βパワーを90%、脱落率10%と設定すると190名ずつ必要となります。そこで最終210名ずつのエントリー目標をたて、エントリー基準、除外基準をそれぞれ満たす症例はリクルートあたり60-70%該当するだろう、という予測の元、600-700名をまずはリクルートするという目標をたてました。
【結果】
ARR: 13.6-12.1=1.5%改善し
NNT: 1/1.5= 66.6人 (1年間あたり)に1人がE/e'の改善を見込まれることになります。
ただ他の拡張能としても評価されている左房容積量の改善はありませんでした。でも左室量は有意に改善しています。
気になるのはTable 6にあります腎障害の悪化です。定義はeGFR < 30 mL/min/1.73 mm2です。
ARR 36%-21%= 15%
NNH: 1/15%=6.6人に1人は期間中に増悪する、ということはちょっと多いですね。カリウム値や女性化乳房を気にしないといけないことも考慮すると積極的には使用できない、ということになりましょうか。