分岐部病変閉塞予測因子の検討 JACC 2013から。

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Journal of the American College of Cardiology 2013;62:1654-9

 

 

【背景】PCI stentingにおいて病変から分岐している血管、いわゆる側枝 (side branch)の保護には毎回工夫を強いられます。過去のデータからmain branchの閉塞は予後に影響するが、side branchは影響ない、という事実があります。しかしつぶせば梗塞になり痛みも生じ、術者として自分で新たに心筋梗塞を作ってしまったという罪悪感も生じるものです。side branchの根元(ostium)に病変があるとmain branch stentingの際に閉塞する予後因子として知られていますが、いずれもsmall studyで終わっています。

 

【Research Question】side branch閉塞の予測因子はなにか、同じside branchでも大きめ(>2.3mm以上)の血管であってもside branch閉塞は予後に影響しないか?

 

【方法】韓国の18施設で登録しているレジストリー COBIS (coronary bifurcation in stenting)から2003-2009年の間DESが留置されているケースをretrospectiveに解析しています。

@ inclusion criteria

1) main branch > 2.5mm, side branch > 2.3mm

2) DESを用いておりmain branch/side branchをkissing balloonn technique (KBT)で処理している。

@ exclusion criteria

1) protected LMT

2) cardiogenic shock

3) side branchからstentingし、main branchにその後stenting する典型的なcullote or T-stenting

 

【評価項目】

side branch閉塞をTIMI 3 未満と定義し、MACEを評価します。

side branchの病態は以下の通りに整理します。

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【患者背景】

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ACSがside branch occulusionに多く、EFも同グループで有意に悪いことがわかります。

 

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有意さのあるところがretrospective analysisの弱点です。近位部、遠位部、そしてside branchにも厳しい狭窄を有す、いわゆるTrue bifurcationはSB occulusion群で有意に多いです。そのため先にSBを拡張しているケースが目立ちます。IVUS施行に有意差がつくことにも違和感を覚えます。

【結果】

CAGでの評価結果は以下の通りです。SB occulusionを起こすケースはmain branch径, SB径が細くいずれも狭窄度が高いことがわかります。むしろ起こさないケースに着目すると実践的です。つまりmain branchの遠位径や分岐角度はSB occulusionになんら影響しないようです。

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以上の項目をmultiple logistic 解析を行うと下記の項目が算出されてきました。

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main branch及びside branchの狭窄が強い場合は2倍以上の確率でSB occulusionになります。vulunerable plaqueを有すACSも同様です。LMTは太いからむしろ起こさないとありますが、これは仮に起こしていたらLCxの閉塞ですから事は大変になります。

 

そして12か月後のMACEは以下の通りになりました。

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2.3 mm以上の径を有すSBですので、cariac deathが増えるのは当然かもしれません。ステント内閉塞はIVUS guide下でないことが多かったり、高圧拡張の程度が弱いなど防ぎ得る拡張不十分が起因しているのではないかと考えます。

 

【私見】

@分岐部は2-link stentという風潮がありますが、DESの種類に関係がないようです。

@太いside branchでもTIMI3以上のフローが確認できれば1-stent strategyでもいい、といえます。

@ stenting前のSB branchに対するpre-dilatationは、それだけ狭窄度が強い病変だったので、predilatation自身が閉塞させたのではなく、元から閉塞しそう、ということが否定できません。

 

後ろ向き研究は俯瞰することが大切で真実を追求するにはこれらの項目を意識した前向き研究が必要です。

 

 

 

拡張型心不全に対するアルドステロン受容体拮抗薬の効果JAMA

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【背景】心不全の50%以上を占める、拡張型心不全症例には一定の薬物投与内容が決定しておりませんでした。

 

【Reserch Questions】

ドイツとオーストリアから10施設、422人の拡張型心不全症例に対するアルドステロン受容体拮抗薬の効果を確かめることを目的としております。

 

【Method】

多施設、ランダム化、前向き、二重盲研究です。心不全 (NHYA II かIIIで駆出率 50%以上に保たれている)で救急搬送された422症例(平均年齢67才、52%女性)の患者さんをアルドステロン受容体拮抗薬服用群とプラセボ群に分け1年間追跡したのち心エコー評価;E/e'と最大運動能力;peak VO2を比較しました。

ランダム化にはPocock and Simon法が採用されています。これはエントリーされていくたびに患者背景にばらつきが生じないよう、重みづけを行いながら均等に割り付けする方法です。動的割り付け法ともいいます。

 

Entry基準;50才以上でNHYA II かIIIで駆出率 50%以上に保たれている慢性心不全症例。エコー診断でGrade I以上の拡張能障害を有すか心房細動を起こしており、かつ最大運動能=分時最大酸素消費量; peak VO2が25 mL.kg/min以下であることとしています。

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除外基準をみてみますが、冠動脈疾患、過去3か月以内のMI, CABG施行症例、肺疾患 (PFTで定義)、重度の肥満、クレアチニン 1.8 mg/dL以上の腎不全、高カリウム血症、IDDMなどが含まれています。

 

【評価項目】

いずれも独立したラボで患者情報をわからない状態で、きちんとトレーニングを受けた技師によって評価されている、と記載されています。

 

心エコー評価

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分時最大酸素消費量; peak VO2:20 Wの仕事量からエルゴメーターを開始し2分毎, 20Wずつ負荷を増量していきます。換気量・酸素摂取量・心拍数を計測します。最大酸素消費量はV-Slope法で産すつされた嫌気閾値における最大量として定義しています。

 

【サンプルサイズ設定】

現実的に治療郡は改善しプラセボ群は悪化していくことが想定されます。そこでパイロット研究を行っていおりますがVO2のばらつき(SD)は5 mL/min/kgでした。一方、E/e'は4でした。

そこで15%改善、悪化するとみたてるとE/e'は0.15 x 4  x =1.2の平均変化量と推測されます。加えてパイロット研究からSDは3と設定されました。以上からSD 0.4, αエラー 0.05, βパワーを90%、脱落率10%と設定すると190名ずつ必要となります。そこで最終210名ずつのエントリー目標をたて、エントリー基準、除外基準をそれぞれ満たす症例はリクルートあたり60-70%該当するだろう、という予測の元、600-700名をまずはリクルートするという目標をたてました。

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フローチャート

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【結果】

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ARR: 13.6-12.1=1.5%改善し

NNT: 1/1.5= 66.6人 (1年間あたり)に1人がE/e'の改善を見込まれることになります。

 

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ただ他の拡張能としても評価されている左房容積量の改善はありませんでした。でも左室量は有意に改善しています。

 

気になるのはTable 6にあります腎障害の悪化です。定義はeGFR < 30 mL/min/1.73 mm2です。

ARR 36%-21%= 15%

NNH: 1/15%=6.6人に1人は期間中に増悪する、ということはちょっと多いですね。カリウム値や女性化乳房を気にしないといけないことも考慮すると積極的には使用できない、ということになりましょうか。

 

Angiotensin-Neprilysin inhibitrorー新規心不全治療薬 NEJM2014

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ARB以来の心不全患者で予後を改善させる新薬の登場を示唆する論文です。ネプリライシンには、ナトリウム利尿ペプチド、ブラジキニン、アドレノメデュリンといった内因性血管作動性ペプチドを分解する作用があり、ネプリライシンの阻害により、これらの物質の濃度が上昇し、神経ホルモンの過剰な活性に拮抗します。 LCZ696は、ネプリライシン阻害薬sacubitril(AHU377)とARBバルサルタンの化合物であり、重篤な血管浮腫のリスクを低減するために開発されました。高血圧または駆出率の保持された患者を対象とした小規模試験では有効性が確認されたため、長期使用が慢性心不全や駆出率の低下した患者に及ぼす影響を、ACE阻害薬エナラプリルと比較しております。

UK、ダラス、ボストンの有名病院と開発元ノバルティス社の共同作業です。筆頭著者のDr. McMurrayは前年度EHJ heart failureの本試験、PRADIGM-HFの骨格となる論文を発表しています(2013; 15. 1062-1073)。

 

【Reserach Question】

新規心不全治療薬、Angiotensin-Neplysin阻害薬 (LCZ 696)は予後を変えうる薬物か?

 

【Method】

@ study design; ランダム化・二重盲検を基本としたものですが、新規薬剤で最も注意すべき、副作用による脱落を極力おさえるためお試し期間ともいえるrun-in periodを対象薬となるEnalaprilにも、2週間、設けております。その後ランダム化して追跡しています。

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@ 対象患者

1) 18歳以上でNYHA II-IVでEF 35%以下。

2) BNP; 150 pg/mL以上かNT pro BNP 600 pg/mL以上で年内に心不全入院している。

3) レニベース 10mg/day相当量(Table 1) のACE-I/ ARBで、少なくとも4週間は加療されている。

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4) またβ遮断薬も同様に少なくとも4週間は加療されています。

 

アルドステロン受容体遮断薬に関しては必須項目とはしておりませんが、腎機能やカリウム値を考慮して、可能であれば少なくとも4週間は加療されているいただくようにと依頼はかけているようです。除外基準は上記Table 2のとおりです。私見として内容は至極当然のようなものばかりと判断しています。簡単にお示ししますと、

1) 急性期疾患;急性心不全やMI、不整脈(頻脈・徐脈)コントロール不良ケースや、

2) 重症心不全でCRTなどのディバイスを必要とするケース。

3) 手術を必要とするような別の病態、消化器疾患なども含めた、ケースや予後5年以内を予測されたケース

 

などなどです。最終LCZ 696; 4187人、レニベース 4212人にランダム化され、追跡調査しております。

 

@ Primary endopoint

心血管死・心不全入院の複合項目ですが、心血管死単独で違いがだせるようサンプル数を算出している、と記載されているところがポイントです。つまり上記人数になるに至った根拠として、約3年追跡で14.5%の心血管死発生、レニベース郡では特に7.0%をみつもり、80%検出力で、15% LCZ696郡でイベント抑制しうる、両側5%検定、とした条件から算出しております。倫理上、中間解析するための委員会も設置しております。中間解析方法は1回目、p<0.0001,2および3回目はp<0.001のLCX 696の死亡(全死亡・心血管死いずれも含む)を片側性で検定しております。p値からO'Brien-Fleming法に近い解析法といえます。2,3回目解析が比較的0.05に近く設定されているため有意差が出やすい反面、1回目p値が厳しいため早期中止になりにくい解析法といえます。

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(*医学界新聞に連載された琉球大学植田真一郎教授の解説から図を引用させていただきました。)

 

【Result】

ではつづいて結果をみてみます。LCZ 696が効果的であったことから、上記中間解析結果に基づき27か月で追跡の中止勧告がなされました。

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RRR; 1-21.8%/26.5%=17%のリスク減少がみられ、

ARR; 26.5% - 21.8% = 4.7%分に相当し

NTT; 1/4.7%=21.2人 (27か月あたり)が LCZ 696を服薬することに恩恵を被るという結果になります。

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K-M解析からも特にハードエンドポイントであったB, Dに有意をもって改善は驚愕です。

 

著者らは参考として個々の内容について、下記のような図を提供しております。75歳以下であればNYHA の程度にかかわらず、たとえ腎障害があっても期待できそうです。ただアジアンが有意性をだしていないところに我々には課題が残ります。

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【私見】

Neprilysinはβアミロイドタンパクを分解する作用があります。マウスに過剰発現させると12-20か月で同タンパクが半分にまで減ることが報告されています(J Mol Neurosci. 2004;22(1-2):5-11.)。LCZ 696長期服用がアルツハイマー病発症と因果関係が気になるところです。ただこのような実験系では過剰発現モデルと肝臓で代謝されてしまう薬物とでは全身に回る効果が雲泥の差があります。さらに過剰発現モデルと薬物ではシステムフィードバックのかかり方にも同様、雲泥の差があるため、可能性と確立論で考えるとアルツハイマー病発症という点に関し(多くの交絡因子も含みますし)差を導き出すことは困難なように感じます。

 

慢性心不全の治療にはCaptoprilに代表されるACE阻害薬が20年あまりにわたって確立されています。SOLVD研究からは特に中等度までの心不全に有効とあります。ただ当時に医療背景とは現在では大きく異なります。ACE-I/ARB以外の内服レジュメがほぼ確立した現在、この背景でハードエンドポイントを改善させたことは驚愕です。

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FFR vs IVUS retropspective single center study, 2010年JACC interventionsから。

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著者所属名にはソウルとカリフォルニアの施設名がありますが、著者は全員韓国人です。Methodのところにどこの患者が記載がありません。単施設、後ろ向き解析のように感じます。

【Research Question】
IVUS > 4mm2カットオフ値は予後良好であることから確立した数値として広く受け入れられています。またIVUS < 4mm2カットオフ値はFFR < 0.75カットオフ値相当と報告がありますが、それぞれを比較した研究はなく、またIVUSのカットオフ値を4mm2と規定していいか、もっと少なくてもいいのかが不明です。

【方法】
過去2年間IVUS or FFRが施行された連続症例を後ろ向きに解析しています。最終、FFR; 83人、IVUS; 94人がそれぞれ該当しました。Inclusion criteriaは以下のとおりです。

1)single vessel disease。

2)血管径 > 2.5mm。

3)QCA 40-70%狭窄。

4)負荷心電図等、非侵襲的検査で虚血が証明されていない事。

【患者背景】

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【統計解析】
Endpoint; 1年後のMACEとし、内容はTVR, TLR, Deathです。解析法としては後ろ向き解析のため特別な方法はとられていません。カイ二乗検定で比較し1年後のMACEをカプランマイヤー法で解析しています。

【結果】
MACE発生率は3%あまりと非常に少ないものでした。しかしPCI施行率はIVUS群で9割あまり施行され、FFR群と比較すると3倍多いです。もともと造影して有意狭窄だな、とQCAマターでの感覚がそのまま反映されている、と考えていいんでしょう。

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ここの事象で解析しても両群に有意差は認められませんでした。

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DiscussionではIVUS < 3.0mm2カットオフ値にするとPCI施行率はほぼ同じ42.6%となりMACEも同様、差がない結果とあります。著者はおそらく2.5mm2 あたりが妥当なのではないかと推測していますが、サンプル数を先行研究から算出して検討し直さないといけないと記載されています。

【私見】
IVUSのover estimateなツールという結果にはなっています。後ろ向き検討とはいえ、患者背景には差がないところから、信頼性は低くないように思います。ただIVUS, FFPいずれを選択するか、医師の裁量によることから病変に対するIVUS or FFRの選択に偏りが生じます。またFFR vs IVUSという割には同一患者に両方のモダリティを用いていないため比較にも無理があると感じます。

iFRとFFR; ADISE studyから。

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                                                                                                      Am Heart J 2014;168:739-48

 

iFRの理念を打ち出したJustin DaviesをPIとした多国籍の方々によって検討された論文です。

【Reseach Question】

 

医師によってiFR, FFRの同時測定をする中で

1)FFRのカットオフ値0.8がiFRでどの程度の数値になるかを評価すること。

2)虚血のカットオフ値 0.75以下がiFRではいくつか?

虚血閾値を良好な特異度を持って表すFFR値はあくまで0.75である。しかしDESの成績を鑑みてFFR 0.80まで治療対象とする、ということ。短く分岐血管がなければ0.77でもPCIしてもよいし、一方長く分岐血管もあり症状がなければしないほうがいい。

3)iFR-FFR hybrid strategeのカットオフ値は0.86-0.93でよいか?

の3点を実際診療の現場に立つ医師のその場の判断で対応できるか?をあげています。これまでiFRは検査終了後後解析、すなわちoff line解析でしかできなかったためより実戦的な立場での検証ということが重要なポイントとしてあげられました。

 

【Method】

 ヨーロッパ、アジア、アフリカの16施設、313人の患者から392の”中等度狭窄⇨医師がPCIを迷う”病変を対象に 測定しています。

 

@ 冠動脈に硝酸薬を0.3-0.6mg i.c.したのちiFRを施行します。

FFR時のhyperemiaにはアデノシンを使用しています。

1)CV-lineより;39%, 140-180 ug/kg/min

2)iv-lineより;61%, 60ug (中間値量)

 

冠動脈造影検査上の狭窄度はQCAで評価します。

 

@ iFR & FFR測定の際の準備・確認事項

Calibrationはとても重要です。

Figure 1 & 2: Amplitudeと時相を合わせるまでNormalizationを行うことが重要です。

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@統計処理

2 x 2 formから感度・特異度。ROC解析で一致度を示しています。

 

【Result】

EAPが73%を占めます。責任血管はLADが最も多く66%です。LCxは支配領域がLADに比べ少ないことから、たとえ造影上狭窄が厳しく有意にあると思えてもFFR < 0.80にならないことがあります。その観点でLCxが少ないことは科学的にバイアスを減らす良い患者サンプル背景ではないかと考えます。

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すでにエビデンスの確立されているFFRをもとに、それが有意狭窄を正しく判定できるとした上で、iFRの診断効率の確からしさをROC解析で表現している図です(Figure 4)。本来ならばFFRとiFRの相関を回帰式で求めR2でその関連性を示すほうが理想的な統計解析と思います。

 

FFR 0.8とiFR 0.90の一致する診断効率はAUC 0.87と表現されます。同様に0.75はiFRでは 0.85に、0.75-0.80は0.85にiFRでは相当します。そのAUCはそれぞれ0.90であり、0.93ということになります。つまりiFR 0.85以下は少なくともFAME studyでPCIすべき、という指標と同等であることが相当な確率(AUC 0.93)でいえる、と解釈されます。

 

以上から下記表が現在の臨床で用いられております。すなわち0.85以下ではFFR未施行でPCIを決定する、としております。治療すべきは非常に高い確率であっている、といえます。一方Differすべき、はiFR 0.90以上ではまだFFRとの不一致は少なからずあるため、FFRを施行すべきではないかと考えます。それがiFR 0.93以上になってもFFRとも相同性はあまりあがりません。メーカーが推奨する0.93以上で(FFR未施行で)DIFFERは少しこころもとありません。

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【個人的見解】

@ iFR ;0.86以下であればFFR施行することなく、PCIすべき。

@ iFR; 0.90以上であればFFR施行すべき。

@  iFR 0.96以上であればFFR施行することなく、DIFFER。

 

 

 

 

 

Drug coating balloonのPROBE試験結果 Lancetから。

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                                                                Lancet 2013; 381: 461–67

 

 

ドイツのグループからの報告です。

 

【Research Questions】

         DES留置後の再狭窄病変に対して、DES再度留置、DCB対応、もしくはPOBA    のいずれがよいか。

 

【研究デザイン】

        PROBE法を用いてます。デバイスの選択は術者・患者ともわかります。blindnessは保たれません。しかしf/u restudyを画像解析するものには使用したデバイスがわからない、とあります。ただ実際画像をよくみてしまうとDES留置とballoonのみの違いは明確にわかります。ただDCBとPOBAはわかりません。しかし画像解析者が本当にblindnessが保たれたか、ということには保障なく記載もありません。

 

【方法】

PECO

Patients;リムス系DESを留置された18歳以上の患者で虚血の症状を有するか、虚血が証明されていて、かつCAGで50%以上の再狭窄病変を有することがわかっていることがエントリー条件です。一方除外項目はACSや腎障害 (eGFR <30),CABG後やLMT病変の患者です。DESに対するDCBの非劣性を証明するために、35%の狭窄血管系になることを目標に、非劣性マージンを7%に、α 0.05, 検出力 80%に設定し95%信頼区間のもと算出すると102人一グループあたりの人数を必要するという計算になりました。一方POBAとは優性試験として行っております。α 0,025 (two-way)で検出力90%として計算すると101名と算出されました。

Exporsure; Drug corting balloon

Comparison; Drug eluting stent, POBA

Endpoint; 6ヶ月後再造影し評価をQCAで行います。

 

@ 妥当か?

治療デバイスに基づいて分類された患者背景をみますとほぼ均等な人数で、詳細項目にも大きな差はありません。再狭窄病変をMehran分類を用いて解析していますが、過去の報告内容と同様で、かつ群間差もなくランダマイズ化はきちんとなされていると判断できます。【研究デザイン】でも書いたようなPROBE法特有の問題は残ります。

【結果】

@患者背景

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再狭窄の分類にはMehran分類を用いることが一般的で形態的に4つのタイプに分類します。

Type I; Focal type less than 10 mm以内:BMS; 42%

A; stentとstentの間。

B; edge

C; in stent

D; 複数

Type II - IV; 10 mm以上

II; in stent; BMS;21%

III; ステントを超えて広がる: BMS; 48%

IV; occlusion: BMS;7%

 

ただこれがDESになるとfocal lesion restenosisが最も多いこととやはりMehranらが報告しております。

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再狭窄率はDCB, DESではそれぞれ27%, 24%です。DESの再狭窄率はDES後再狭窄であれば、妥当な数字かと思います。

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DCBの半年後再造影検査結果から得られたQCAはDESの非劣性が、POBAに対しては優勢が証明されたという結論になります。

 

 

偽膜性腸炎の診断

院内で抗菌薬の管理業務もしていますので、感染症診療にも興味をもって診療しております。院内感染の問題としても注目される偽膜性腸炎; clostridium defficile infectionの簡易・迅速診断法として便中白血球の有用性を調べております。

 

その観点でJAMAのSystematic reviewがあったので読んでみました。

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                                                                                           JAMA 2015; 313 (4) 398-408

 

方法;46年間の論文から4500あまりの論文を抽出して行ったsystematic reviews. 特に細菌の10年に関してはガイドライン上の診断方法に準拠してレビューしている。そこから116論文を検討した。

 

@診断法;

基本的に無症状でcolonizationしているケースと有症状のケースを区別することはできない、ということが大前提(2010年のガイドラインにも明記(Cohen SH, et al.  Infect Control Hosp Epidemiol. 2010;31(5):431-455)されており24時間以内に3回以上の下痢の存在があったうえで

  • 画像上イレウスかtoxic megacolonの所見
  • トキシン陽性;24-48時間培養して行う。3pgのトキシンを検出する感度は94-100%、特異度は99%をほこる。検査を繰り返しても感度は改善しない。
  • Colon Fによる偽膜の確認のいずれかをもって行う。

 

Gold standardとしては24-48時間培養して抗原をEIA法で同定するかr-PCRを用いて増幅して48時間培養しcytotoxicity assay (CCA)で同定する。

しかし実際には時間を要するためにトキシンチェックで済ましている。

通常はCDが生成するgltamate dehydrogenase (GDH)をEIAで同定するが、毒性のある、なしのCDを区別することができない(46%はnontoxigenic CD)。そのためトキシンチェックと合わせて検査を行う必要がある。

 

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以上をもってFigure 2のようなアルゴリズムに準拠して診断を行う(感度;91%、特異度98%、NPV; 99%)。

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当院ではトキシンチェックに加えglutamate dehydrogenaseに対する抗原を調べ始めております。しかしGDH陽性でトキシン陰性のケースはPCRを行うというラインにはのっておらず主治医判断として対処しています。GDH法は24-48時間かかるため迅速に便中白血球のグラム染色がどの程度影響しているか、2015年の日本内科学会で研究の成果の一部をご紹介することになっております。