プラスグレルとクロピドグレル

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新規抗血小板剤であるプラスグレル(エフィエント)が販売されました。2年前に参加した日本循環器学会で久しぶりにPositive resulutが得られた素晴らしい大規模臨床研究だと紹介されていました。

 

著者はBringham Medical Women's Hospitalのチームが主体です。

 

@ PECO

Patietns; 10,074人のNSTEMI/UA

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Exposure; プラスグレル Loading dose (LD) 60mg, 維持量 (MD); 10mg

Comparison; クロピドグレル LD 300mg, MD; 75mg

治療開始は約26%は冠動脈造影検査前になされています。また約半分には本

邦では未承認のGPIIb/IIIa受容体拮抗薬が投与されています。

 

Outcome; 複合アウトカム; 死亡・非致死性心筋梗塞脳卒中を30日、90日、3ヶ月、

6-15ヶ月と追跡します。

 

@論文の妥当性

 

Double blind randomization、ITT解析とあります。f/u期間は平均14.5ヶ月なので臨床的に適切と考えます。

 

結果をみていきます。

 

1。治療効果の観点

全体としてはHR 0.81 (0.73-0.90)でプラスグレルが上回る結果となっています。具体的にみてみるとプラスグレル;9.9%, クロピドグレル;12.1%のエンドポイントに達しているので、

 

RRR; 1- 9.9/12.1=19%の改善がみられ、

ARR; 12.1-9.9=絶対数としては2.1%分改善がみられます。

NNT; 1/0.17=47.6人に1人が15ヶ月間でプラスグレルの恩恵を被るという結果に

なりました。

 

NSEEMI/UAのケース;HR 0.82 (0.73-0.93)、STEMIのケース;HR 0.79 (0.65-0.97)といずれもプラスグレルが上回る結果です。追跡期間中いずれもプラスグレルの優位性が保たれています。まだサブ解析としてGPIIb/IIIa受容体拮抗薬使用していない症例でも同様な観点で行われていますが、同様の結果と記載されています。

 

特に差がでたイベントは心筋梗塞の発症抑制効果で、逆に死亡、脳卒中には差が認められませんでした。

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2。安全性の観点

ステント血栓症の発生;HR 0.48 (0.36-0.64)とプラスグレルで少ないことが示されています。定義はARCステント血栓症にのっとっています。Need Harm Treatment; NHTで考えると

NHT; 1/2.4%-1.1% = 76.9人 (15ヶ月)に1人はステント血栓症を起こしにくい恩恵をプラスグレルだと得られる、という計算になります。

 

出血;致死性出血はプラスグレル 21人 (0.4%) に対しクロピドグレル 5人 (0.1%)とプラスグレルの使用群のほうが多い結果になっています。NHT = 1/0.4%-0.1% = 300人に1人はプラスグレルを飲んでいると致死性出血を起こす。その可能性は最大95% conffidnece intervalから11.11倍にもなりうる、という見方もできます。

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どのような患者に出血のリスクが高いかを調べるサブ解析が行われています。

 

1;陳旧性脳梗塞、2;75歳以上、3;60kg以下でその傾向は強くなります。

 

逆にこの3項目をいずれも満たさなければプラスグレル群のほうがクロピドグレル群よりも出血の危険性は少ないとあります。

 

考察では薬の量を検討する必要があると記載されています。なおスポンサーは第一三共とEliLillyです・・・・。開発元ですね。

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日本人女性におけるpravastatinの有効性

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                                                                        Circulation 2008;117:494-502

【私見】知り合いの先生からご質問をいただきました。そのため文献を調べてみました。

 

患者様は50歳代女性(閉経済み)。
既往歴なし。家族歴は母親が高コレステロール血症。心臓病なし。

健康診断を当院でお受けになりました。
理学的所見なし。自覚症状なし。血圧正常。糖尿病なし。喫煙なし。肥満なし。眼底正常。
血液でLDLコレステロール172、HDLコレステロール99、中性脂肪92でした。
母親も同じ様なパターンらしいです。上記のように心臓疾患はありませんが、念のためにコレステロールの薬は飲んでいるようです。
こういうLDLが高くHDLも高い方。
他にリスクもない。このような方にスタチンの治療は必要でしょうか。

もう少しLDLが低ければ(根拠はないのですが150以下ぐらい)でしたら私は先ず治療をしません。
LDLが微妙なところ、あとドクターの奥様というのもちょっと気になります。
本人は運動をしていなくて、最近体重が少し増えてきたので運動を始めたとのこと。もう少し様子をみたいと申しておりました。私もそれに同意しましたが運動で、それほどLDLが下がるとは思えません。

今回取り上げた論文はMEGAスタディのサブ解析です。

MEGAスタディはPROBE法であるため解釈は難しいところがあります。そのサブ解析ですからみたいところだけ見て判断する必要があります。

経年的変化が動脈硬化をすすませる最大の因子ですので、直観的な感覚では70歳すぎまででしたらむしろスタチンを処方したほうがいいと思っています。逆に超高齢者では影響はもうないのではないかと考えます。

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研究デザイン;PROBE法。ITT。

Patient: 40-70才までの高脂血症(TCHO; 5.7-7.0 mmol/L; 220-270 mg/dL)で冠動脈疾患や脳血管障害の既往のない患者。7832参加し、内5356名の女性を解析対象とした。平均年齢は59.7才。

Exporsure; Pravastatin 10-20 mg/day (TCHO; 220mg/dLに達しない患者は医師の裁量で20 mg/dayまで増量している)

Comparison; diet

Endpoints; primaryは心血管イベント(心臓死・非心臓死)、再狭窄治療、狭心症。最大10年間追跡。

 

【患者背景】

42.6%に高血圧を認めています。

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【結果】

経年的にイベントは発生していっています。有効性は60歳以上で顕著にみられます。心血管イベントは治療郡で37%, 対象郡で26%それぞれ低下しています。低下率の違いに有意差はみられません。ただし60才以上では冠動脈疾患は45%, 脳卒中は64%それぞれ低下し抑制率が大きいようです。

 

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ご相談いただいた患者さんは本研究においてもLDL値は高値ですし、まだ50歳代です。ジェネリックスタチンも十分な効果を示している(Ann Intern Med. 2014 Sep 16;161(6):400-7)ことから対費用効果の面から考えてもストロングスタチン・ジェネリックの使用を提案しました。

 

GRACE score のACS疑いを含めた予後精度

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                                                                     Am J Cardiol 2013; 111:202-207

 

 

 【目的】急性冠症候群 (ACS)の診断は、詳細な問診・心電図やバイオマーカーなどの検査を用いても依然難しいものです。本論文では確定的ACSに比し、ACS疑いの症例に対する治療を含めたアプローチで予後に影響を及ぼしていないかをGRACE scoreを用いて比較検討することを目的としております。また同時にACS疑いをACSと診断する際、もっとも効果的な因子はなにかを同定することも目的としております。

 

【方法】

1)18歳以上、2)病院到着24時間以内でACSに矛盾ない症状を有する、3)心原性バイオマーカーの異常、心電図変化の存在、冠動脈疾患の既往のうち少なくとも1つを有する、以上の3つを満たす症例を対象としています。

 

@-1

これらの患者群を

(Definite ACS);STEMI, NSETMI, UAとチャートに記載のあったもの

(Possible ACS);r/o MI, chest pain, other cardiaとチャートに記載のあったもの。

に分けて追跡しております。その間不十分データであった531例は除外しています。

 

@-2

次にGRACE risk scoreをつけ上記2グループを入院中に

死亡、心筋梗塞再発、心不全、心原性ショック、VF、虚血再燃

がどの程度起こっているか、またGRACE scoreの予測性能も比較検討しています。

 

【患者背景】

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【結果】

16,618人がこの試験に参加し、11,152 人がDefinite ACS郡に、5,466人がPossibe ACS郡に分類されました。

またPossibe ACS郡5,466人のうち76%が最終的にACSと診断されました。診断の決め手となる要素はKillip III or IV; Adjusted OR 1.53 (1.12-2.08), biomarker; Adjusted OR 1.58 (1.36-1.82), , ST deviation; Adjusted OR 1.45 (1.25-1.69),  inverted T;Adjusted OR 1.30 (1.06-1.58), , sys BP↑; Adjusted OR 1.07 (1.04-1.09),が有意変数でした。

またGRACE scoreは確定ACS郡であってもACS疑い群であっても、いずれの予測精度に優れたものといえました (Figure 1)。

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【私見】

2003年ー2007年に集められた‘Stent世代`症例でのGRACE scoreの予測精度はどの程度保たれているかを興味に調べた論文です。

GRACE scoreの平均値はDefinite ACS郡で130点、Possible ACS郡で125点でした、AUC値からいずれの群も予後を予測するアルゴリズムとして優れた成績といえます。またACS疑いをACSと診断する決め手はバイオマーカー、ST変化だったということもうなづける結論でした。

ただし予後追跡において、本研究にエントリーしている症例に対する治療に

PCI もしくはCABGはそれぞれ33%, 35%にしか施行されていません。また入院期間中の死亡は3.1%, 3.4%と低いものでした。またMIの再燃が9.0%, 2.5%に、虚血の再燃が25%ずつ認めているところから血行再建の不十分さは読み取れます。日本のように90%以上血行再建され、かつ薬剤溶出性ステントの現在で果たして同様の結果が得られるかというと疑問です。

 

GRACE score

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                            Arch Intern Med 2003; 163: 2345-2353 

【私見】

現時点で知られている急性冠症候群の予後予測スコアにGRACE score, PERSUIDE score, TIMI scoreがあります。中でも最も予測性能が高いと考えられるGRACE scoreの論文です。STEMI郡ではprimary PCI; 16.1%, elective PCI; 32.4%, NSTEMI郡ではprimary PCI; 16.9%, CABGはSTEMI 郡では 3.2%, NSTEMI郡では 6.8%と予後を劇的にかえるインターベンションが少ないことが問題にあげられます(我が国は97%がインターベンション施行)。それと2003年に発表された内容ですが、対象患者はdrug eluting stentがまだ世の中にでていない1999年から2001年の時代になっているところが注意すべきポイントの一つになります。

【背景】

過去の予測因子作成モデルで問題点としては選択バイアスがかかっていることがあげられます。具体的には

1)臨床研究データベースを利用しているがリスクの高い患者は除外される傾向にあるため実臨床と合わない事。

2)データベースでの処理は医療保険にはいっている高齢者に限られたり国際コードにそったカテゴリでソートをうけた患者のみ、など偏りがみられる事。

3)血栓溶解療法を受けたSTEMI患者といった選択バイアスがかかったデータベースである事。

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*Killip分類;本研究では以下のとおりに定義づけている。

Class I: 心不全徴候なし

Class II: ラ音聴取、もしくは頸静脈怒張あり

Class III: 肺うっ血あり

Class IV: 心原性ショック状態

 

【方法】

18区域、94病院、14か国にまたがるコホートにすることで極力選択バイアスせばめる工夫をしています。。ただしこの参加国は欧州、米国、ニュージーランドなどであり、アジアからは参加していません。

患者のInclusion criteriaは

18歳以上で、虚血性心疾患を疑わせる胸痛症状があり、かつECG変化、バイオマーカー、もしくは冠動脈疾患が同定されているかのいずれか1つを含んでいる症例としています。。注意すべき点としては事前に搬送されて24時間以内に亡くなったケースは除外している病院もあることと記載がありそこにバラつきがあることが推測されます。

 

Endpoint

@入院中の死亡

【結果】

13708人が1999年から2001年の間にエントリーされた。うち898名はACSでなかったため除外された。結果最終11389名が解析対象となっている。21.9%の症例が24時間以内に亡くなっています。ただこれは上記にあるように全施設から同一の見解かどうか不明になります。

 

それ以外の内訳は以下の通りです。

 

35.3%: STEMI

15.2%に血栓溶解法での治療が施されていた。

31.6%では来院時バイオマーカーが陽性だった。

1.5%は到着時心停止、1%に心原性ショックを認めた。

 

 そのほかの特徴としてはStatinが20.4%にしかはいっていない。アスピリンは43%。β遮断薬は記載はありませんでした。

 

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Figure 4に代表される5つのスコア、Killip class, sBP, HR, Age, creatinineに加えて心停止・ST変化・心筋逸脱酵素の上昇が加わるかをそれぞれ重みづけをしてスコア化するとc-statistic; 0.84と良好な予後予測ができることが示されました。

【考察】

GRACE modelの優れている点として著者は以下の3つをあげています。

1)ACSの全経過を把握したうえでの最初の予後予測モデル。

2)選択バイアスがないこと。

3)c-statistic; 0.84と良好な予後予測ができること

 

拡張型心筋症における予後因子としての心筋MRIの位置づけ

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                                  Gulati A et al, JAMA 2013 vol 309, No.9 896-908

【私見】

拡張型心筋症 (DCM)は2500人に1人の割合でみられる心筋障害で心不全や突然死の原因になりうるため治療できうる不整脈に対する処置、つまりICD (implantable cardiac defibliration)をいつ植え込むかどうかそれを示唆する指標を必要とします。心臓MRIによる中隔におけるガドリニウム遅延造影効果→線維化を示す、は約5倍、恐らく不整脈によると考えられる突然死を予測しうるため、よきマーカーになると考えます。

【背景】

@5年生存率は20%程度。そのため予後予測マーカーの確立は重要な課題となっている。

@特に突然死を起こす症例にはこれまでのところ駆出率 (EF)のみでは有効な予測因子になっていない。

@DCMの30%に心筋中隔にガドリウムによる造影効果を認める症例があることが知られている。

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DCMの予後マーカーとしてこれまでEFが知られているが近年発達の著しい心筋MRIで線維化の程度を因子として組み込めばより予測因子として充実したものになり、将来的にICD (implantable cardiac defibliration)の準備を早めたりする可能性もでてくる。

 

【方法】

前向き縦断研究。英国の医療機関1施設。 2000-2008年に集積された症例。

@DCMの診断方法は下記に準ず。

1)心エコーで左室拡張を伴ったEF低下症例。冠動脈疾患は除外されている。

2)心筋梗塞による線維化を起こしている症例は除外。

@心MRI

1.5T。ガドリニウム i.v.後10分で撮影。中隔の線維化の判定は心筋内か、心外膜下に造影効果を2方向いずれも認める場合とする。

@予後

基点を心臓MRIを撮影したときとし、以後6ヶ月おきに追跡調査する。平均5.3年 (31日から11年)。

Primary endpoint; 死亡(原因は問わない)

Secondary endpoints; 心臓突然死(心機能低下がみられることなく1時間以内で、もしくは寝ているとき、もしくは少なくとも24時間以内に生存が確認されていた状態)、心不全(入院点滴加療を必要とする場合)、脳卒中

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【結果】

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@最終489人がエントリーし追跡できなかった17人を除く、472人を対象とした。

@冠動脈疾患の除外は74%; CAG, 11%; 負荷心筋シンチ、残りは40歳以下で狭心症の既往がなく冠危険因子も1個以内であったため検査はしていない。

@ 30%を占める142人に中隔線維化が観察された。

@Primary endpoint

No fibrosis; 10.6%

Fibrosis; 26.8% なので

1) Risk reduction (RR); 10.6/26.8=0.4, No fibrosisであればイベントは 40%少ない。

2) Relative RR; 1-0.4=0.6 

3) Absolute RR; 26.8-10.6=16.2%

@心移植

No fibrosis; 7.9%

Fibrosis; 28.9%    HR 4.1 (2.5-6.7)

@ ICD; HR; 3.8 (2.2-6.6)

@CRT-D; HR; 2.4 (1.4-4.0)

CRTのみでは両郡に有意差がなかった。つまりFibrosis群は大いに不整脈を誘発すると考えられる

@突然死;HR 5.2(3.2-8.7)

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これらのデータから従来のEFだけでの予測モデルから心臓MRIの線維化のデータを加えると29%程度改良されたモデルに仕上がると結論づけられた。

 

 

 

 

 

New oral anticoagulant (NOAC) のレビュー

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                                                                      Thromb Haemost 2014; 111: 798-807

 

【私見】

70歳未満であればワーファリンよりもNOAC(Edoxaban 60mg/dayの場合。30mg/dayは該当せず)のほうが経済的観念以外の点で優れていることは明白です。脳出血がこれだけ抑えられている理由にはXaのみ、thrombinのみ、といった選択性の高い薬剤を開発したからかもしれません。

ただ80歳以上になれば、高血圧症、認知機能の問題からワーファリンを含めた抗凝固療法いずれも患者、患者に則した処方が肝要になります。また脂肪がうすくなるためSenile purpura;老人性紫斑も必然的に増えます。血圧の問題からapixabanを選択するか、認知機能の問題からアドヒランスの優れたrivaroxabanやedoxabanを選択するか、といった考えに至っております。一方消化管出血ですが、便中におけるNOACの血中濃度は保たれたままのようです。特にDabigatranは上部も下部も消化管内でその濃度は保たれています(他のNOACは上部のほうが濃度は高い)。だからDabivatranが消化管出血が多い、という理由になるかどうかはわかりません。

高齢者の場合はrivaroxaban 15mg/dayと5mgだけ量をおとした日本人量がどの程度なものか期待をしております。

 

【背景】

【各試験の特徴】

@優れている点

1) RE-LY: 最初の報告

2) ROCKET-AF; 最初のdouble blind, double dummy試験。1日1回投与。

3) ARISTOTLE; 年齢、腎機能、体重で層別化を行い容量を決定している、現場に則した試験

4) ENGAGE AF TIMI 48; 腎機能、体重で層別化を行い容量を決定している、現場に則した試験 (基本 ARISTOTLE試験と相違はない)。

 

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@問題点

1) RE-LY: PROBE法のためバイアスが入っている。

2) ROCKET-AF; 日本人投与量は10-15mg/dayだが、20mg/dayで組まれたデザイン。また脱落者が多いためper protocol analysisででた優位性はITTは喪失している。

3) ARISTOTLE; 目立った問題はない。

4) ENGAGE AF TIMI 48; 目立った問題はない。

5) Rivaroxaban , Edoxabanは一日一回投与で便利だが消化管出血の頻度はワーファリンより多い。

 

【結果】

1.Primary endopoint

Apixaban 5mg bid, Dabigatran 150mg bidでワーファリンに対して優位性がある。しかしそれでも他のNOACもすべて非劣性が証明されている。

2. Haemorrhagic stroke

すべてワーファリンよりも脳出血の頻度が有意に少ない。

 

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【まとめ】

1. Dabigatran 150mg bid Apixabanは大出血イベントを抑えつつ、有意脳卒中を減らした。

2. Dabigatran 110mg bidとRivaroxaban, Edoxaban 30mg/day/ Edoxaban 60mg/dayは脳卒中予防や全身性塞栓においてワーファリンに比べ非劣性を証明した。特にEdoxaban 60mg/dayは心血管イベントによる死亡も減らした。

 

【試験の考察から抽出された問題点】

1. 脳出血脳卒中イベントとカウントしつつ出血事象ともカウントするダブルカウントが発生している。

2. 早期中止;ROCKET AF, ENGAGE AFはITTに有利な結果をもたらす。脱落者も他の研究に比べ10%程度多めだった。

@早期中止の理由はCHADS2 scoreが高めだからかもしれない。

RE-LY; 2.1, ROCKET; 3.5, ARISTOTLE; 2.1, ENGAGE; 2.8

3. 予測外の副作用がRE-LY, ROCKET-AF, ENGAGE AFにみられた。

@ Dabigatran 150mg bid , Rivaroxaban, Edoxaban 60mg/dで、消化管出血の頻度は増える。

@Dabigatranで心筋梗塞発生が多かった。

4. 予測外のmortalityがEdoxaban 30mg/dayにみられた。

@心血管イベントが少なくmortalityの改善がみられた。

 

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高感度トロポニンTの使用法

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Arch Intern Med. 2012;172(16):1211-1218. 

 

私見;高感度トロポニンT (hsTnT)がNEJMにその診断効率の高さ(ROC解析)が報告されたが、現場ではまだその使用法に浸透性を感じません。本論文は現場でどのように使用するか一つのヒントになる研究です。

 

【背景】高感度トロポニンTの効果的使用方法が定まっていません。急性冠症候群の除外診断、確定診断を行う際にどのような診断アルゴリズムをくむべきかを検討しております。

【方法】胸痛を主訴に救急室に来院した872名を対象とした。hsTnTを来院時および1時間後に測定した。STEMIは心電図診断のみで対応できるため除外している。急性心筋梗塞の定義はAHA/ESCガイドラインにのっとってをhsTnT >=14 ng/mLとした。もしくは1時間以内に2 ng/mLの上昇、2時間以内に4 ng/mLの上昇、3時間以内に6 ng/mLの上昇、もしくは6時間以内に10 ng/mLの上昇とした。このいずれにも該当せず、CAGで70%以上の狭窄病変を有する症例をunstable angina pectoris (UAP)とした。

【追跡期間】30日後の全死亡をprimary endpointとした。3,6,12ヶ月後に患者状況を電話等で確認した。

【結果】NSTEMIは147名、UAPは104名だった。NSEMIの診断効率は以下のとおりです。感度; 88%, 特異度; 76%, NPV; 97%, PPV; 43%。

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Fig 2; NSTEMIで結果的にはミスされた14 ng/mL以下の症例は3.2%のみだった。

 

次にこのコホートを無作為に436名ずつ抽出し、アルゴリズム(来院時 hsTnT < 12 ng/mLかつ1時間後 3 ng/mL以下の除外群、来院時 hsTnT > 52 ng/mLもしくは1時間後 5 ng/mL以上の急性心筋梗塞郡、その中間の観察郡)に乗っ取るderivation cohortと通常経過をみて冠動脈造影検査に至るveridation cohortとに分類した。結果はFig 3に示すとおり。

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 まとめるとTable 3のとおり。つまり除外項目に該当すれば100%、急性心筋梗塞を除外できることになる。False positive 12名の内訳は不整脈 4名、心筋炎 1名、肺塞栓 2名、hypertensive crisis 1名、心不全1 名、原因不明 3名だった。

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また各郡の追跡結果はFig 4のとおり。

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【まとめ】POCTで汎用されているTrop T/ Rapi checkのように単に陽性、陰性で判定(質的)すつことなく実数値、変化していく値量(量的)で判断するとより診断効率があがることがわかります。特に高‘感度’なので除外するためには本アルゴリズムにのっとった量的アプローチが有用と考えます。