冠動脈CTA検査と負荷心筋シンチなどの機能的検査の比較

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【背景】胸痛を訴える患者さんに対して、冠動脈疾患を有するか、否かを判定することは循環器医のみならず内科医としてとても重要です。見逃すと死亡率30%の心筋梗塞になりかねません。Diamond & Forresterの古典的な問診(すなわち性別・年齢・典型的胸痛かどうか)やFramingham scoreなどのリスクファクターからのアプローチから次に行うべき検査を考えます。通常なら負荷心電図検査を行いますが、ご高齢者や膝など運動機能の低下している場合や何より不安定狭心症を疑う場合は不適切な検査法となります。近年器具の進化の著しい冠動脈CTA検査は陰性的中率95-99%を誇る、虚血性心疾患を否定するためには強力な診断機器といえます。ただこれまで機能的検査(負か心筋シンチ・ドブタミン負荷エコー・エルゴメーターなどの負荷心電図)と直接的な比較は報告されていませんでした。

 

【Reserach Question】冠動脈CTAと機能的心臓検査は予後や放射線被ばく量にどのような影響を与えるか?

 

【方法】北米193施設から計10,003人の患者が2010-2013年の間にエントリーしました。ランダム化前向き研究です。2年間のフォローアップ予定でしたが、資金の影響で最低1年間という形になっております。追跡は60日後には来院していただきますが、半年後、1年後は電話、もしくはメールで確認します。

 @ Inclusion criteria

胸痛を有しており冠動脈疾患と過去に診断されたことがなく、かつ緊急性が乏しいが非侵襲性検査を必要とすると医師により判断された方々です。また54才以上の男性、64才以上の女性か、45-54才までの男性もしくは50-64才までの女性であれば冠動脈危険因子(糖尿病、高血圧症、喫煙、脳血管障害や末梢血管障害)を一つでも有すること。

@ Exclusion criteria

不安定な血行動態、急性冠症候群疑い、1年以内に冠動脈疾患の表がをされている、先天性疾患や弁膜症、心筋症などを有している。

 

【評価項目】

一次評価項目;複合項目;死亡、心筋梗塞、不安定狭心症による入院、CAG検査後72時間以内に発症した合併症(脳梗塞、大出血、腎不全、アレルギー)

二次評価項目;一時評価項目に加えて、CAGの結果有意狭窄がないこと、放射線被ばく(積算);90日後に評価

 

【患者背景】

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60才前後で男女比も半々でf/u 率も90%を超えています。65%の高血圧症に50%の喫煙とバックグラウンドもうなずける様相です。10年発症リスクも7.5%以上とでるコホートです。スタチン、アスピリンは45%程度の患者が服用しβ遮断薬は25%というのもイメージしやすいですね。

 

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【結果】

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Primary endpointのK-M 曲線からは有意な差が得られませんでした。HR 1.04 (0.83-1.29)。ただ放射線被ばくはcoronary CTA郡で有意に多いとなります(12 mSv vs 14 mSv)。CXP; 0.05 mSv, Ba swarrow; 2mSv、放射線従事者が規定されている年間被ばく量が50 mSvです。一方でcoronary CTA郡では有意に有意狭窄のない冠動脈疾患を有する患者を検出しています (3.4% vs 4.3%)。冠動脈造影検査は入院が必要で、最低でも1泊2日、通常2泊3日はかかります。費用も、保険適用で3割負担の場合でも検査だけで約10万円、入院費などを含めると12~15万円かかります。また、動脈にカテーテルを挿入するため、まれなケースではありますが、カテーテルが血管を傷つけたり、脳梗塞心筋梗塞などの合併症によって患者さんが亡くなりえます。対して冠動脈CT検査は、検査費等込みで、保険適用(3割負担)で約1万円程度ですみます。

【私見】

適切な検査の選択はいうまでもありませんが否定するための検査であればcoronary CTA、治療を必要とするかもしれない、と思われるケースではマスターダブル負荷心電図で陰性を確認したあとの負荷心筋シンチグラフィー検査という考えで私は対応しています。