GRACE score
Arch Intern Med 2003; 163: 2345-2353
【私見】
現時点で知られている急性冠症候群の予後予測スコアにGRACE score, PERSUIDE score, TIMI scoreがあります。中でも最も予測性能が高いと考えられるGRACE scoreの論文です。STEMI郡ではprimary PCI; 16.1%, elective PCI; 32.4%, NSTEMI郡ではprimary PCI; 16.9%, CABGはSTEMI 郡では 3.2%, NSTEMI郡では 6.8%と予後を劇的にかえるインターベンションが少ないことが問題にあげられます(我が国は97%がインターベンション施行)。それと2003年に発表された内容ですが、対象患者はdrug eluting stentがまだ世の中にでていない1999年から2001年の時代になっているところが注意すべきポイントの一つになります。
【背景】
過去の予測因子作成モデルで問題点としては選択バイアスがかかっていることがあげられます。具体的には
1)臨床研究データベースを利用しているがリスクの高い患者は除外される傾向にあるため実臨床と合わない事。
2)データベースでの処理は医療保険にはいっている高齢者に限られたり国際コードにそったカテゴリでソートをうけた患者のみ、など偏りがみられる事。
3)血栓溶解療法を受けたSTEMI患者といった選択バイアスがかかったデータベースである事。
*Killip分類;本研究では以下のとおりに定義づけている。
Class I: 心不全徴候なし
Class II: ラ音聴取、もしくは頸静脈怒張あり
Class III: 肺うっ血あり
Class IV: 心原性ショック状態
【方法】
18区域、94病院、14か国にまたがるコホートにすることで極力選択バイアスせばめる工夫をしています。。ただしこの参加国は欧州、米国、ニュージーランドなどであり、アジアからは参加していません。
患者のInclusion criteriaは
18歳以上で、虚血性心疾患を疑わせる胸痛症状があり、かつECG変化、バイオマーカー、もしくは冠動脈疾患が同定されているかのいずれか1つを含んでいる症例としています。。注意すべき点としては事前に搬送されて24時間以内に亡くなったケースは除外している病院もあることと記載がありそこにバラつきがあることが推測されます。
Endpoint
@入院中の死亡。
【結果】
13708人が1999年から2001年の間にエントリーされた。うち898名はACSでなかったため除外された。結果最終11389名が解析対象となっている。21.9%の症例が24時間以内に亡くなっています。ただこれは上記にあるように全施設から同一の見解かどうか不明になります。
それ以外の内訳は以下の通りです。
35.3%: STEMI
15.2%に血栓溶解法での治療が施されていた。
31.6%では来院時バイオマーカーが陽性だった。
1.5%は到着時心停止、1%に心原性ショックを認めた。
そのほかの特徴としてはStatinが20.4%にしかはいっていない。アスピリンは43%。β遮断薬は記載はありませんでした。
Figure 4に代表される5つのスコア、Killip class, sBP, HR, Age, creatinineに加えて心停止・ST変化・心筋逸脱酵素の上昇が加わるかをそれぞれ重みづけをしてスコア化するとc-statistic; 0.84と良好な予後予測ができることが示されました。
【考察】
GRACE modelの優れている点として著者は以下の3つをあげています。
1)ACSの全経過を把握したうえでの最初の予後予測モデル。
2)選択バイアスがないこと。
3)c-statistic; 0.84と良好な予後予測ができること