腎不全とTroponin T
Troponin T levels in patients with ACS with or without renal dysfunction
NEJM 2002; 346:2047-52 Aviles RJ et.al
背景; GUSTO IV trial のデータベースを利用した前向き観察研究。GP IIB/IIIa inhibitorを用いたdouble blind randomaized studyでエンドポイントをdeath or MI composit endpointである。
問題点;
- 薬物効果をみる研究であるため24hr 以内の早期血行再建術を施行されていない。48h以降をみても最終的に30% (PCI 19%, CABG 11%)しか施行されていない。
- エンドポイントをMIとのcompositにしているため血行再建されていないACSのため容易に30日以内の追跡でMIを発症しやすくなり、結果エンドポイント発生率は増加してしまう。
- Ccr < 10 mL/min以下は11人と約0.3%程度しか含まれていない。平均値で76 mL/minと腎機能はかなり保たれている症例がはいっていることでセレクションバイアスがはいっている。25 th quantileでも58 mL/min とCcrは高め。eGFRでみると平均年齢が高くないことから75%はCKD stage IIIという集団ともいえる。
目的
トロポニンT値が腎障害の有無によって予後評価として成り立つか。
患者;
7033人のACS。
ACSの定義
1)ST変化 (0.5mm以上)を伴った少なくとも5分以上持続する胸痛
2)TnT or TnI 陽性。
結果
- 多変量解析;Troponin T 0.1 ng/mL以上のほうがOR 1.7 (1.3-2.2)でエンドポイントに達しやすい。変数には心不全ははいっているが、ただし変数にCcrははいっていない。
- Ccr quartileでFirstに比しFourthのORは2.5 (1.8-2.2)。
- Figure 3でみるとCcr 60以下からORがあがってくる。
考察
エンドポイント率を高めているスタディ。また腎障害も軽度症例が多いため評価はまだ難しい。ただCcr>60であれば死亡、もしくは心筋梗塞の発症予測には影響ない。一方で30以下であると1.5倍くらい予後が悪くなる。