拡張型心筋症における予後因子としての心筋MRIの位置づけ
Gulati A et al, JAMA 2013 vol 309, No.9 896-908
【私見】
拡張型心筋症 (DCM)は2500人に1人の割合でみられる心筋障害で心不全や突然死の原因になりうるため治療できうる不整脈に対する処置、つまりICD (implantable cardiac defibliration)をいつ植え込むかどうかそれを示唆する指標を必要とします。心臓MRIによる中隔におけるガドリニウム遅延造影効果→線維化を示す、は約5倍、恐らく不整脈によると考えられる突然死を予測しうるため、よきマーカーになると考えます。
【背景】
@5年生存率は20%程度。そのため予後予測マーカーの確立は重要な課題となっている。
@特に突然死を起こす症例にはこれまでのところ駆出率 (EF)のみでは有効な予測因子になっていない。
@DCMの30%に心筋中隔にガドリウムによる造影効果を認める症例があることが知られている。
DCMの予後マーカーとしてこれまでEFが知られているが近年発達の著しい心筋MRIで線維化の程度を因子として組み込めばより予測因子として充実したものになり、将来的にICD (implantable cardiac defibliration)の準備を早めたりする可能性もでてくる。
【方法】
前向き縦断研究。英国の医療機関1施設。 2000-2008年に集積された症例。
@DCMの診断方法は下記に準ず。
1)心エコーで左室拡張を伴ったEF低下症例。冠動脈疾患は除外されている。
2)心筋梗塞による線維化を起こしている症例は除外。
@心MRI
1.5T。ガドリニウム i.v.後10分で撮影。中隔の線維化の判定は心筋内か、心外膜下に造影効果を2方向いずれも認める場合とする。
@予後
基点を心臓MRIを撮影したときとし、以後6ヶ月おきに追跡調査する。平均5.3年 (31日から11年)。
Primary endpoint; 死亡(原因は問わない)
Secondary endpoints; 心臓突然死(心機能低下がみられることなく1時間以内で、もしくは寝ているとき、もしくは少なくとも24時間以内に生存が確認されていた状態)、心不全(入院点滴加療を必要とする場合)、脳卒中。
【結果】
@最終489人がエントリーし追跡できなかった17人を除く、472人を対象とした。
@冠動脈疾患の除外は74%; CAG, 11%; 負荷心筋シンチ、残りは40歳以下で狭心症の既往がなく冠危険因子も1個以内であったため検査はしていない。
@ 30%を占める142人に中隔線維化が観察された。
@Primary endpoint
No fibrosis; 10.6%
Fibrosis; 26.8% なので
1) Risk reduction (RR); 10.6/26.8=0.4, No fibrosisであればイベントは 40%少ない。
2) Relative RR; 1-0.4=0.6
3) Absolute RR; 26.8-10.6=16.2%
@心移植
No fibrosis; 7.9%
Fibrosis; 28.9% HR 4.1 (2.5-6.7)
@ ICD; HR; 3.8 (2.2-6.6)
@CRT-D; HR; 2.4 (1.4-4.0)
CRTのみでは両郡に有意差がなかった。つまりFibrosis群は大いに不整脈を誘発すると考えられる。
@突然死;HR 5.2(3.2-8.7)
これらのデータから従来のEFだけでの予測モデルから心臓MRIの線維化のデータを加えると29%程度改良されたモデルに仕上がると結論づけられた。