高感度トロポニンTの使用法

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Arch Intern Med. 2012;172(16):1211-1218. 

 

私見;高感度トロポニンT (hsTnT)がNEJMにその診断効率の高さ(ROC解析)が報告されたが、現場ではまだその使用法に浸透性を感じません。本論文は現場でどのように使用するか一つのヒントになる研究です。

 

【背景】高感度トロポニンTの効果的使用方法が定まっていません。急性冠症候群の除外診断、確定診断を行う際にどのような診断アルゴリズムをくむべきかを検討しております。

【方法】胸痛を主訴に救急室に来院した872名を対象とした。hsTnTを来院時および1時間後に測定した。STEMIは心電図診断のみで対応できるため除外している。急性心筋梗塞の定義はAHA/ESCガイドラインにのっとってをhsTnT >=14 ng/mLとした。もしくは1時間以内に2 ng/mLの上昇、2時間以内に4 ng/mLの上昇、3時間以内に6 ng/mLの上昇、もしくは6時間以内に10 ng/mLの上昇とした。このいずれにも該当せず、CAGで70%以上の狭窄病変を有する症例をunstable angina pectoris (UAP)とした。

【追跡期間】30日後の全死亡をprimary endpointとした。3,6,12ヶ月後に患者状況を電話等で確認した。

【結果】NSTEMIは147名、UAPは104名だった。NSEMIの診断効率は以下のとおりです。感度; 88%, 特異度; 76%, NPV; 97%, PPV; 43%。

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Fig 2; NSTEMIで結果的にはミスされた14 ng/mL以下の症例は3.2%のみだった。

 

次にこのコホートを無作為に436名ずつ抽出し、アルゴリズム(来院時 hsTnT < 12 ng/mLかつ1時間後 3 ng/mL以下の除外群、来院時 hsTnT > 52 ng/mLもしくは1時間後 5 ng/mL以上の急性心筋梗塞郡、その中間の観察郡)に乗っ取るderivation cohortと通常経過をみて冠動脈造影検査に至るveridation cohortとに分類した。結果はFig 3に示すとおり。

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 まとめるとTable 3のとおり。つまり除外項目に該当すれば100%、急性心筋梗塞を除外できることになる。False positive 12名の内訳は不整脈 4名、心筋炎 1名、肺塞栓 2名、hypertensive crisis 1名、心不全1 名、原因不明 3名だった。

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また各郡の追跡結果はFig 4のとおり。

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【まとめ】POCTで汎用されているTrop T/ Rapi checkのように単に陽性、陰性で判定(質的)すつことなく実数値、変化していく値量(量的)で判断するとより診断効率があがることがわかります。特に高‘感度’なので除外するためには本アルゴリズムにのっとった量的アプローチが有用と考えます。