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AMIの除外診断方法;高感度トロポニンとH-FABPのコンビネーションアプローチ

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                                                                                                          BMC (2016) 16:34

 

 

【研究の背景】

非ST上昇型心筋梗塞 (NSTEMI)の初期診断は心電図変化が明確でないことから容易ではありません。一方バイオマーカーは定量的評価ができるため非専門医でも使いやすい特徴があるため、救急外来で汎用されています。高感度トロポニン (hs-cTn)はAMIの診断に優れたマーカーですが、感度99%にまでは到達しておらず、急性心筋梗塞 (AM)発症後3-4時間未満ではまだ有意な上昇を見ないためAMIの初期診断にはまだ改善の余地があると考えられています。

 

【リサーチクエスチョン】

 NSTEMI疑いの患者に対して来院時に測定したhs-cTnと心臓脂肪蛋白 (H-FABP)の値をそれぞれいくつに規定することで効果的にAMIを除外できるか?

 

【方法】

@ 試験デザイン

ニュージーランドとオーストラリアの2カ国2施設で行われた ADAPT (2-Hour Accerelated Diagnostic Protocol to Assess Patients with Chest Pain Sympton Using Contemporary Troponins as the Only Biomarker)研究によって集められた観察研究です。2007-2011年の間、救急室に来院した連続1435名を対象に行われました。そこから救急医、もしくは循環器医の診療で急性冠症候群を疑われた1079例を対象としました。

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◼️ exclusion criteria

STEMI, 18歳未満、明らかにACSによる症状でないもの、他病院に転院したもの。

 

【研究プロトコール

後ろ向き研究です。 

 

@ AMIを除外するためにhs-cTnとH-FABPの最適値を規定するために以下の方法が用いられました。 

 

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つまり検出度最低限の数値から (1., 2.)、AMIの診断結果に基づきバイオマーカーとの2 x 2テーブルを書き、感度を算出します (3.)。次に陰性率を算出します (4.)。これを基本骨格として0.1 ng/Lずつトロポニンの値を増加し最終I, Tそれぞれの正常人での99 percentileの値まで1-5のステップを検証しAMIを感度99%以上で除外しうる最適なhs-cTnとH-FABPの数値を規定します。

 

サブ解析として

1。胸痛発症後時間別検討

a) 3時間未満

b) 3-6時間

c) 6時間以上

2。入院期間の短縮の程度

a) 本解析に参加した全患者の入院期間を元にAMIをこのアプローチ法で除外できた方々の入院期間の割合

を、それぞれ行なっています。

 

【アウトカム】

NSTEMIを感度99%以上で否定しえるhs-cTn値とH-FABP値を規定する。NSTEMIの診断は二人の循環器医によって各種データを元に、後ろ向きに検討されました。

 

 【結果】

  • 患者背景です。半分以上が男性がで、平均年齢が65歳前後です。AMI; 248名含まれています。

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最初は各種バイオマーカーのAMI, 非AMI患者での分布を示します。

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hs-cTnIが明確に見えます。

続いてコンビネーション値の検証に移ります。

最初はhs-cTnIのデータから。

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感度99%以上に持っていくためには10ng/L以上もしくはH-FABP 4.3 ng/L以上であること、か、99 percentile以上、つまり26 ng/L以上かH-FABP 3.9 ng/L以上であることで、陰性率;こちらは偽陰性数と陰性数を合計したものを全患者数で割った値になりますが、それぞれ40.9%, 34.9%となります。つまり前者の方がより高率にAMIを否定しえる各バイオマーカーの至適値となります。

 

これを以下の図が別側面として視覚化してくれています。

 

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99%の感度のラインに沿って最も陰性率の高いところが効果的除外エリアということになります。

 

同様にhs-cTnTとのデータを以下に示します。

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最後にサブ解析の結果を示します。

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以上から本論文では以下の3点を明らかにすることができました。

1)99%感度でAMIを否定するためには心電図変化を伴うことか、カットオフ値はhs-cTnI; 10ng/L、H-FABP 4.3 ng/L以下であること。

2) 同カットオフ値は発症3時間以内でも感度100%で除外できる。

3) 入院期間を平均3.5日→hsTnI combination; 2.7日、hs-TnT combination; 2.9日に短縮できた。

 

【私見】

コンビネーションアプローチはこれまでmultiple logistic analysisより予測式(いわゆる一次方程式の形になります)を構築し、そこから導き出された数値からROC解析→カットオフ値を算出することが知られていました。本研究は感度99%と先に設定し最も陰性率が高い値が求めているコンビネーション値とする、という方法を用いた斬新なものです。確認するvaridationコホートを構築し検討する必要がありますが、hs-cTnTの使用経験からするとここまで低値のhs-TnTなら否定はできるだろうと思います。ただそのぶん偽陽性がとても多いのではないかと感じます。