井上の読み方2;20160904

ではメソッドの読み込みにうつりましょう。

 

1)研究デザインをまず見極めます。Randomized control trial (RCT)なのか、観察研究なのか、ケースコントロールなのか。リサーチクエスチョンに合っているかどうかを踏まえ検討します。薬物の効果をみるためにはRCTが最適です。

必要な事柄は以下の通りです。 1)コントロール薬 (concurrent control; 同時であることが当然望ましいが過去処方薬といったhistorical controlという場合も存在します):投与方法が異なる場合は薬物Aとコントロール、偽薬物Aとコントロールをいずれも服用させる、というdouble dummy法もあります。 2)対象患者背景の均一化:無作為抽出が最適です。以前は封筒法などがありましたが、現在はインターネットを用いた無作為化が定番です。 3)試験実施者のみならず被験者もblinding もしくは maskingを必要。なぜならば被験者も薬物に対する知識、影響など知っている可能性があり、無意識に影響しうる因子を修飾し何らかの効果を与える可能性があります。そのためどちらもブラインド化されていることが望ましい、となります。一方で死亡といったハードエンドポイントであればブラインド化しなくてもいい場合があります。

デメリットはコントロールの薬剤を用意しなくてはならないことです。試験薬と同じ形態で作成しなくてはなりません。なぜなら医師、患者いずれもどちらの群に属しているか、文字通りダブルブラインドにしないといけないからですね。最もお金がかかり、注意も最高レベルにし、システマティックに行えないとエラーします。容易にRCTができない理由です。近年薬剤の新規開発が困難かつ経費もかかることからRCTは消えていくことになるといわれています。それにかわる方法も開発されていますが機会のあるときに触れましょう。

  • アウトカムの設定

ハードエンドポイント;誰がみても同じ結果。例えば死亡・心筋梗塞脳梗塞など。

ソフトエンドポイント;観察者間で異なる可能性を有するもの。例えば不安定狭心症の診断、入院など。

近年、急性冠症候群のカテーテル治療の効果が、特に我が国では著しく進化しているため同研究のアウトカムにハードエンドポイント;つまり死亡や心筋梗塞再発としてもイベント発生数があまりに低いため研究参加人数をとても多くしないと成り立たなくなっています。そこで複合エンドポイント;composite endpointという概念がうまれました。心血管イベント;MACE; major advanced cardiac endpointと呼んでいます。MACEには死亡、心筋梗塞、例えば血管再狭窄、なども含んで総じて、どーよ、と語ります。なかなか正直苦しいエンドポイントですが・・・・。

■サンプル数設定

一次エンドポイントに対してサンプル数を決定します。決定する際の必要要素は以下の3点です。1)α値、2)β値、3)イベント発生予測数。

α値;いわゆるp値です。0.05のことです。ソフトバンク日本ハムがデッドヒートしています。なーんにも野球を知らない人にどっちが強いか理解させるためには何連勝すれば伝わるでしょう?個人的には日ハムが好きですがたぶんソフトバンクのほうが強いでしょう。なので2連勝、3連勝、はたまた4連勝すれば理解してくれますか?4連勝する確率は0.5 x 0.5 x 0.5 x 0.5=0.625です。5連勝ならさらに0.5かけて0.03125となりました。つまり0.05以下ですね。5連勝すれば野球を全くしらない方にでもソフトバンクって強いんだなーって感覚的に理解してもらえる数字でした。だからp <0.05で有意なんです。時折論文でP<0.00001とかありますが、野球論でいえば10連勝ケースですね。でもそれって5連勝でも10連勝でもたぶんソフトバンクのほうが強いって思いません、どっちでも?だからわざわざこまかーなp値は見た目、みみっちい感じもしますしどうでもいい、ってすぐれた医師であり統計家でもあります森本剛先生はおっしゃっていました。

では続いてβ値。

これは検出力パワーともいいます。俗に有意さあるのにぼーっとして見逃してしまう、そんなことないように十分な確率で有意さを見逃さない数値をいいます。ぼーっとβ、って覚えるとよくネットに書いてあります。詳細もそれで参照してください。数値は80%が一般的です。本論文では90%とより厳格に設定しています。

最後のイベント発生率は過去の論文から引用します。なければご自身で先行研究を行えばいいでしょう。以上の3つの数値をネットでサンプル数設定とググれば計算式、でていますので、そこに入力すれば得られます。そうそう一個忘れていました。脱落数です。長い研究であれば脱落する登録者もでてきますね。長い研究はこういった点でも苦労が絶えません。