COPERNICS
【背景】β遮断薬は現在の心不全治療の主流になり軽度心不全で、その位置は確立されています。
【Reserach Question】(研究開始当時)β遮断薬の心不全治療に効果的であるという試験は軽度から中程度心不全までで重症心不全患者を対象とした試験はなかった。果たして効果的か?
【方法】21か国、334施設から計2289人の患者がエントリーしました。ランダム化二重盲試験です。カルベジロールを3.125mg b.i,dで開始し2週間ごとに6.25mg b.i.d, 12.5 mg b.i.d, 最終 25mg b.i.d.まで増量します。平均10.4か月の治療期間です。2年半あまりで試験中止の勧告がでました。追跡は60日後には来院していただきますが、半年後、1年後は電話、もしくはメールで確認します。
@ Inclusion criteria
■ EF < 20%
■ 利尿剤、アルドステロン拮抗薬、ACEI/ARBを用いたガイドラインに推奨された内科的治療を行っている。
■ ラ音聴取、腹水の貯留などなく、せいぜい軽い下腿浮腫がある、程度にコントロールされていること。
■ 入院患者も登録できるが、カテコラミンや血管拡張剤の点滴加療されていないこと。また急性心不全症状を呈していないこと。
などです・
@ Exclusion criteria
■ 弁膜症
■ 心臓移植後
■ 重症な肺や腎臓、肝障害がある。
■ β遮断薬禁忌例
■ 不安定な血行動態、急性冠症候群や難治性不整脈などを有している。
■ α遮断薬、Ca拮抗薬、class I 抗不整脈薬をエントリー4週間以内に開始されている、もしくは2か月以内にβ遮断薬を開始されたケース。
■ クレアチニン 2.8 mg/dL以上
【評価項目】
一次評価項目;死亡
二次評価項目;死亡と入院(内容は心原性に限らず、いずれによる入院です)の複合項目
【統計処理】
■ カプランマイヤー生存曲線
■ Cox proportinal hazards regression model
■ サンプル数設定
プラセボ群1年後の死亡率を28%との先行研究からカルベジロール投与群;20%と見積もりα;5%, β; 90%で算出した。イベント率が高率になることが予測されたため死亡数が900例に達するまで本試験を継続する、とした。
■ 中間解析
O'Brien-Flemig法;以下を参照のこと。
Angiotensin-Neprilysin inhibitrorー新規心不全治療薬 NEJM2014 - 練馬で働く循環器医のブログ
【患者背景】
平均年齢63才で男性が80%を占めます。短期間であったことからf/u 率も100%です。約65%は基礎疾患が虚血性で平均EFは20%を切っています。β遮断薬群は平均37mg/dayのカルベジロール量となりました。利尿剤、ACE-I/ARBの服薬率は90%超であるのに対し、アミオダロンやアルダクトン拮抗薬の服薬が20%前後ということは現在では少し考えられません。時代背景として認識すべきでしょう。
【結果】
前述通り、中間解析の結果、2年半あまりで試験は打ち切りになりました。試験開始後4カ月の時点でカルベジロール群の平均服薬量は37mgに達しております。平均追跡期間は10.4か月で追跡率は100%でした。5%未満のカルベジロール群の患者は何らかの理由で同薬を服用していることが知らされています。
Primary endpointのK-M 曲線(Figure 1)では有意にカルベジロール群の生存率が高いことが示されました。
プラセボ群;190名、カルベジロール群;130名がそれぞれ観察期間中にお亡くなりになりました。死亡率でみると、カルベジロール群で35%もの低下を認めました。NNTは 一方1年あたりでみますとプラセボ群;18.5%に対しカルベジロール群;11.4%の死亡率でした。NNT=1/(18.5-11.4)=14.1人に1人がカルベジロール服用で恩恵を被れるとなります。
Figure 3は一個一個の変数について比較しております。女性、北米でなければ明らかにカルベジロール群が効果的です。
死亡以外にも入院をいれた複合ポイントではすべてにおいてカルベジロール群の有意性が示されました。
最後にデメリットの面がないか検討しています。
しかしプラセボ群24.2%が観察期間中、心不全の悪化をきたしましたが、、カルベジロール群では17.5%にとどまりました。
【私見】
carverirolのエビデンスは多くの論文で確定しており、特に本論文は重症の収縮機能の低下した心不全でも効果的であることを示しました。カルベジロールー心不全治療の重要なランドマーク論文です。