V-AECMO症例の予後予測アルゴリズムーSAVE scoreの意義ー
【背景】循環器領域で使用するECMOはPCPS (percutaneus cardiopulmonary system)という呼称のほうが一般的なようです。ただし正確にはV-A ECMOといいます。Veno-Atrial ECMOです。アクセスする血管でV-V ECMOなどもあるわけです。心肺停止の際、最終手段として大変重要な装置ですが、対象となる病態が重症であるがゆえに救命ができないケースも少なくありません。同時にマンパワーやコストパフォーマンスを考慮しなければなりません。そのためには適切な予後予測アルゴリズムは必要です。
SAVE-scoreは以前から知られたアルゴリズムですが小規模のデータしかないことが問題でした。そこで本研究は米国から160施設、他国から120施設が登録しているレジストリー(The Extracorporeal Life Support Organization)からSAVE scoreを確認したのち、オーストラリア1施設ですが、同スコアの有効性を確認する2本立ての研究で構成されています。
【Reserach Question】SAVE scoreは有効か?
【方法】過去レジストリーの後ろ向き解析とそこから得られたSAVE scoreの確からしさを前向き解析で確認するといった2本立ての研究構成です。後ろ向き研究はさらに3種類に分けています。
Step 1; SAVE score 13項目と予後との関係を確認する。
Step 2; 重回帰分析 (multiple logistic analysis)をbootstrapping法(ランダムに抽出したものの中で平均値、中央値を調べる。それを何回も繰り返して変数のばらつきを俯瞰する方法。そのばらつきを示す残差の平方和が最小になるよう回帰式のx切片とy切片を求める。
Step 3; 多重ロジスティック解析を行い有効性を確認しROC解析から導きだされた診断効率を求める。
Step 4; 前向き検討としてオーストリラリアのICUでSAVE scoreの有効性を検証する。
@ Inclusion criteria
V-A ECMOが導入された心原性ショック症例。原因は弁膜症、心移植後、先天性心疾患、大動脈疾患、急性心筋梗塞、劇症型心筋炎、肺塞栓症、敗血症、コントロール不良なVT/VF症例
@ Exclusion criteria
CPR蘇生後症例。呼吸不全症例。
【評価項目】SAVE scoreの変数。
【患者背景】
【結果】
登録者3864名(平均年齢54歳で67%は男性)のうち1601名(42%)が生存、退院しています。疾患内訳は33%に慢性腎機能障害、29%は急性心筋梗塞、17%に弁膜症が占め、V-A ECMO開始前に心停止をきたした症例は32%占めています。
下図は予後予測変数をオッズ比で表しています。
慢性腎不全、V-A ECMO開始までに人工呼吸器管理が長期間に及んだケースや臓器障害、心停止をきたしたケース、先天性心疾患、脈圧 < 20 mmHg、HCO3低値は予後が悪いことがわかります。
逆に38歳以下、76-89kgの方、急性心筋炎、コントロール不良なVT/VF、拡張期血圧が保たれている(40mmHg以上)ケースの予後は良好でした。
ROC解析結果からやはり確率されているICU患者の予後予測アルゴリズムでありますSOFAやAPACHEよりもSAVE scoreは上回っています。
SOFA scoreとはSequential Organ Failure Assessment Scoreのことで, 多臓器不全の評価に使用されます(JAMA 2001;286:1754-58)
APACHE (Acute Physiological and chronic health evaluation)scoreはII-IVまでありますがIIが汎用性があります。IIIは経時的変化も要素に含んでいます。書きにIIを示します。引用元はメルクです。
Table 5はSAVE scoreの層別化と疾患別の予後を表しています。score値を5群に分けるとclass IからVまでは75%, 58%, 42%, 30%, 18%のmortalityとなります。
【参考資料】