日本人女性におけるpravastatinの有効性

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                                                                        Circulation 2008;117:494-502

【私見】知り合いの先生からご質問をいただきました。そのため文献を調べてみました。

 

患者様は50歳代女性(閉経済み)。
既往歴なし。家族歴は母親が高コレステロール血症。心臓病なし。

健康診断を当院でお受けになりました。
理学的所見なし。自覚症状なし。血圧正常。糖尿病なし。喫煙なし。肥満なし。眼底正常。
血液でLDLコレステロール172、HDLコレステロール99、中性脂肪92でした。
母親も同じ様なパターンらしいです。上記のように心臓疾患はありませんが、念のためにコレステロールの薬は飲んでいるようです。
こういうLDLが高くHDLも高い方。
他にリスクもない。このような方にスタチンの治療は必要でしょうか。

もう少しLDLが低ければ(根拠はないのですが150以下ぐらい)でしたら私は先ず治療をしません。
LDLが微妙なところ、あとドクターの奥様というのもちょっと気になります。
本人は運動をしていなくて、最近体重が少し増えてきたので運動を始めたとのこと。もう少し様子をみたいと申しておりました。私もそれに同意しましたが運動で、それほどLDLが下がるとは思えません。

今回取り上げた論文はMEGAスタディのサブ解析です。

MEGAスタディはPROBE法であるため解釈は難しいところがあります。そのサブ解析ですからみたいところだけ見て判断する必要があります。

経年的変化が動脈硬化をすすませる最大の因子ですので、直観的な感覚では70歳すぎまででしたらむしろスタチンを処方したほうがいいと思っています。逆に超高齢者では影響はもうないのではないかと考えます。

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研究デザイン;PROBE法。ITT。

Patient: 40-70才までの高脂血症(TCHO; 5.7-7.0 mmol/L; 220-270 mg/dL)で冠動脈疾患や脳血管障害の既往のない患者。7832参加し、内5356名の女性を解析対象とした。平均年齢は59.7才。

Exporsure; Pravastatin 10-20 mg/day (TCHO; 220mg/dLに達しない患者は医師の裁量で20 mg/dayまで増量している)

Comparison; diet

Endpoints; primaryは心血管イベント(心臓死・非心臓死)、再狭窄治療、狭心症。最大10年間追跡。

 

【患者背景】

42.6%に高血圧を認めています。

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【結果】

経年的にイベントは発生していっています。有効性は60歳以上で顕著にみられます。心血管イベントは治療郡で37%, 対象郡で26%それぞれ低下しています。低下率の違いに有意差はみられません。ただし60才以上では冠動脈疾患は45%, 脳卒中は64%それぞれ低下し抑制率が大きいようです。

 

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ご相談いただいた患者さんは本研究においてもLDL値は高値ですし、まだ50歳代です。ジェネリックスタチンも十分な効果を示している(Ann Intern Med. 2014 Sep 16;161(6):400-7)ことから対費用効果の面から考えてもストロングスタチン・ジェネリックの使用を提案しました。