GRACE score のACS疑いを含めた予後精度
Am J Cardiol 2013; 111:202-207
【目的】急性冠症候群 (ACS)の診断は、詳細な問診・心電図やバイオマーカーなどの検査を用いても依然難しいものです。本論文では確定的ACSに比し、ACS疑いの症例に対する治療を含めたアプローチで予後に影響を及ぼしていないかをGRACE scoreを用いて比較検討することを目的としております。また同時にACS疑いをACSと診断する際、もっとも効果的な因子はなにかを同定することも目的としております。
【方法】
1)18歳以上、2)病院到着24時間以内でACSに矛盾ない症状を有する、3)心原性バイオマーカーの異常、心電図変化の存在、冠動脈疾患の既往のうち少なくとも1つを有する、以上の3つを満たす症例を対象としています。
@-1
これらの患者群を
(Definite ACS);STEMI, NSETMI, UAとチャートに記載のあったもの
(Possible ACS);r/o MI, chest pain, other cardiaとチャートに記載のあったもの。
に分けて追跡しております。その間不十分データであった531例は除外しています。
@-2
次にGRACE risk scoreをつけ上記2グループを入院中に
がどの程度起こっているか、またGRACE scoreの予測性能も比較検討しています。
【患者背景】
【結果】
16,618人がこの試験に参加し、11,152 人がDefinite ACS郡に、5,466人がPossibe ACS郡に分類されました。
またPossibe ACS郡5,466人のうち76%が最終的にACSと診断されました。診断の決め手となる要素はKillip III or IV; Adjusted OR 1.53 (1.12-2.08), biomarker; Adjusted OR 1.58 (1.36-1.82), , ST deviation; Adjusted OR 1.45 (1.25-1.69), inverted T;Adjusted OR 1.30 (1.06-1.58), , sys BP↑; Adjusted OR 1.07 (1.04-1.09),が有意変数でした。
またGRACE scoreは確定ACS郡であってもACS疑い群であっても、いずれの予測精度に優れたものといえました (Figure 1)。
【私見】
2003年ー2007年に集められた‘Stent世代`症例でのGRACE scoreの予測精度はどの程度保たれているかを興味に調べた論文です。
GRACE scoreの平均値はDefinite ACS郡で130点、Possible ACS郡で125点でした、AUC値からいずれの群も予後を予測するアルゴリズムとして優れた成績といえます。またACS疑いをACSと診断する決め手はバイオマーカー、ST変化だったということもうなづける結論でした。
ただし予後追跡において、本研究にエントリーしている症例に対する治療に
PCI もしくはCABGはそれぞれ33%, 35%にしか施行されていません。また入院期間中の死亡は3.1%, 3.4%と低いものでした。またMIの再燃が9.0%, 2.5%に、虚血の再燃が25%ずつ認めているところから血行再建の不十分さは読み取れます。日本のように90%以上血行再建され、かつ薬剤溶出性ステントの現在で果たして同様の結果が得られるかというと疑問です。