New oral anticoagulant (NOAC) のレビュー
Thromb Haemost 2014; 111: 798-807
【私見】
70歳未満であればワーファリンよりもNOAC(Edoxaban 60mg/dayの場合。30mg/dayは該当せず)のほうが経済的観念以外の点で優れていることは明白です。脳出血がこれだけ抑えられている理由にはXaのみ、thrombinのみ、といった選択性の高い薬剤を開発したからかもしれません。
ただ80歳以上になれば、高血圧症、認知機能の問題からワーファリンを含めた抗凝固療法いずれも患者、患者に則した処方が肝要になります。また脂肪がうすくなるためSenile purpura;老人性紫斑も必然的に増えます。血圧の問題からapixabanを選択するか、認知機能の問題からアドヒランスの優れたrivaroxabanやedoxabanを選択するか、といった考えに至っております。一方消化管出血ですが、便中におけるNOACの血中濃度は保たれたままのようです。特にDabigatranは上部も下部も消化管内でその濃度は保たれています(他のNOACは上部のほうが濃度は高い)。だからDabivatranが消化管出血が多い、という理由になるかどうかはわかりません。
高齢者の場合はrivaroxaban 15mg/dayと5mgだけ量をおとした日本人量がどの程度なものか期待をしております。
【背景】
【各試験の特徴】
@優れている点
1) RE-LY: 最初の報告
2) ROCKET-AF; 最初のdouble blind, double dummy試験。1日1回投与。
3) ARISTOTLE; 年齢、腎機能、体重で層別化を行い容量を決定している、現場に則した試験
4) ENGAGE AF TIMI 48; 腎機能、体重で層別化を行い容量を決定している、現場に則した試験 (基本 ARISTOTLE試験と相違はない)。
@問題点
1) RE-LY: PROBE法のためバイアスが入っている。
2) ROCKET-AF; 日本人投与量は10-15mg/dayだが、20mg/dayで組まれたデザイン。また脱落者が多いためper protocol analysisででた優位性はITTは喪失している。
3) ARISTOTLE; 目立った問題はない。
4) ENGAGE AF TIMI 48; 目立った問題はない。
5) Rivaroxaban , Edoxabanは一日一回投与で便利だが消化管出血の頻度はワーファリンより多い。
【結果】
1.Primary endopoint
Apixaban 5mg bid, Dabigatran 150mg bidでワーファリンに対して優位性がある。しかしそれでも他のNOACもすべて非劣性が証明されている。
2. Haemorrhagic stroke
【まとめ】
1. Dabigatran 150mg bid Apixabanは大出血イベントを抑えつつ、有意に脳卒中を減らした。
2. Dabigatran 110mg bidとRivaroxaban, Edoxaban 30mg/day/ Edoxaban 60mg/dayは脳卒中予防や全身性塞栓においてワーファリンに比べ非劣性を証明した。特にEdoxaban 60mg/dayは心血管イベントによる死亡も減らした。
【試験の考察から抽出された問題点】
1. 脳出血を脳卒中イベントとカウントしつつ出血事象ともカウントするダブルカウントが発生している。
2. 早期中止;ROCKET AF, ENGAGE AFはITTに有利な結果をもたらす。脱落者も他の研究に比べ10%程度多めだった。
@早期中止の理由はCHADS2 scoreが高めだからかもしれない。
RE-LY; 2.1, ROCKET; 3.5, ARISTOTLE; 2.1, ENGAGE; 2.8
3. 予測外の副作用がRE-LY, ROCKET-AF, ENGAGE AFにみられた。
@ Dabigatran 150mg bid , Rivaroxaban, Edoxaban 60mg/dで、消化管出血の頻度は増える。
@Dabigatranで心筋梗塞発生が多かった。
4. 予測外のmortalityがEdoxaban 30mg/dayにみられた。
@心血管イベントが少なくmortalityの改善がみられた。