井上の読み方320160927

非劣性試験についてお話しします。新規の薬物開発は困難を極めています。開発に時間と労力を費やしても10年でパテントが切れてしまいジェネリック医薬品にとってかわられたんでは・・・・。また効果を実証するためにはRCT; randamized control trialが理想的です。でも(できるだけバイアスを減らそうとした結果)限定的な患者層になりその中で有意差がでるようサンプル数の計算をすると随分と大人数が必要になる。研究費が・・・・。

 

そこで非劣性試験です。優越性を証明しなくてもいい。効果は劣ってはいない、副作用で優越性があった、であれば新規薬物として十分価値があります。優越性を示す、というハードルの高さが多少下がり、サンプル数も節約しえます。ただし前者をもとにサンプル数を設定するため後者の証明がパワー不足になりうる可能性がありますが。

 

同等性、とはいえないか?とも思います。同等性試験もあります。しかし差がないことを証明するということはとても難しい。わずかでも違いがあったことを見逃さないようにするためにはαエラー;つまりp値をとても少なくすることが必要です。ばらつきを示す信頼区間もせばめないとならずそこからサンプル数を算出しますと膨大な数になります。

 

非劣性試験を理解するためには優越性・同等性・劣性のそれぞれの言葉の定義が必要です。大阪大学の新谷歩先生の解説が秀逸です。

医学書院/週刊医学界新聞(第2971号 2012年03月26日)

 差がないラインをこえていれば優越性。

同等性マージン内であれば同等。

非劣性マージンを上回れば非劣性、となります。

非劣性マージン;ここまでの範囲内なら劣っていない、は7%が一般的なようです。ただ先行研究から決めることも当然あります。問題点があるとしたら優越性があったとしても証明できないことと、可能性は少ないとは思いますが、試験するグループが、そもそも検証する薬物が効果的であることが証明されていないといけません。

 

ヘパリンブリッジ

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【リサーチクエスチョン】

心房細動を基礎疾患にもつ患者に対する手術でヘパリンブリッジを必要とするか?

 

【方法】

@ 試験デザイン

randomized, double blind, placebo-controlled. 2009-2014年の間米国、カナダの108施設で1884名の患者で行われました。

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@ 患者

  1. 18歳以上の心房細動(発作性・持続性問わず)で少なくとも3ヶ月以上ワルファリン投与を行われて、INR 2.0-3.0でコントロールされている。
  2. CHADS2 score > 1

 

◼️ exclusion criteria

機械弁、脳梗塞、全身性血栓塞栓症、TIA (12週以内)、大出血 (6週以内), CCr < 30 mL/min, 血小板数 10万以下、心臓・脳・脊椎いずれかの手術

 

【研究プロトコール

30日前から5日前まで;患者スクリーニング

5日前;ランダム化し、ヘパリンブリッジ群はワルファリン服用中止とし3日前からdalteparin 投与を開始 (100 IU/kg 皮下注、1日2回)します。手術前日にINRを測定し1.8以上であればビタミンKで中和、再開は術当日の夕方か翌日にします。dalteparinは小手術であれば12-24時間後から、大手術であれば48-72時間後に再開しINR >2.0で中止します。30日間追跡しております。

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【定義】

◼️ 大出血

まず、症候性であり臨床的に明らかであることを基本とします。非症候性、例えばCTで偶然発見された後腹膜出血などは該当しません。同様に術中、出血し仮に輸血を2単位以上必要とするような場合やヘモグロビン 2 g/dL以上低下しても該当しません。

1)輸血を2単位以上必要とする

2)ヘモグロビン 2 g/dL以上低下

3)頭蓋内、脊椎内、眼窩内、後腹膜、心囊、コンパートメント症候群をきたすような筋肉内出血

4)致死性出血

 

【アウトカム】

@ イベントアウトカム

動脈性塞栓症の有無を30日後の時点で評価します。先行研究からヘパリンブリッジ群で 全身性動脈塞栓症を起こす確率を1%と見積もり効果判定を非劣性 0.025(一側性)、信頼区間は95%とします。

@ 安全性アウトカム

やはり30日以内の大出血の頻度とします。帰無仮説はやはりヘパリンブリッジ群 3.0%, プラセボ群 1.0%程度の発生すると仮定した場合、いずれの群にも有意差がない、です。有意確率を0.05 (二側性)とします。

 

非劣性試験において、検出力 80%で全身性動脈塞栓症の発症を1%、非劣性マージン1%としp<0.025(一側性)と仮定し必要サンプル数を計算すると1641人となり、10%脱落を見込んだうえで最終1813人、必要と算出されました。およそ850人エントリーしてみるとおよそ全身性動脈閉塞症は0.5%程度しか発生しないことがわかったため90%の検出力にあげ歳計算すると1882人が必要サンプル数となりました。

 

【結果】

平均年齢71.7歳で男性が73.4%占めました。平均体重は95.8kg (!)です。平均CHADS2 score: 2.3で38.3%は3点以上でした。34.7%はアスピリンを服用していて7.2%は他の抗血小板製剤を服用しておりました。

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◼️ 対象手術

消化管; 44%、胸部; 17.2%、整形; 9.2%・89.4%が出血率の低い手術に該当。

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◼️ アウトカム

@ イベント;ヘパリンブリッッジ群; 0.3%、プラセボ群; 0.4%⇨有意差なし

@ 安全性;ヘパリンブリッッジ群; 3.2%、プラセボ群; 1.3%⇨プラセボ群がよかった。

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ただし致死性出血は1例も確認されなかった。

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【私見】

結果はおそらくそうなんだろうなあ、と思う内容でもありますが、エントリーしている患者の平均体重はどういうことなんだろう、と思います。こんだけあったら症候性の出血ってどうなるんでしょうかね。少々でても平気そうな・・・・。

 

井上の読み方2;20160904

ではメソッドの読み込みにうつりましょう。

 

1)研究デザインをまず見極めます。Randomized control trial (RCT)なのか、観察研究なのか、ケースコントロールなのか。リサーチクエスチョンに合っているかどうかを踏まえ検討します。薬物の効果をみるためにはRCTが最適です。

必要な事柄は以下の通りです。 1)コントロール薬 (concurrent control; 同時であることが当然望ましいが過去処方薬といったhistorical controlという場合も存在します):投与方法が異なる場合は薬物Aとコントロール、偽薬物Aとコントロールをいずれも服用させる、というdouble dummy法もあります。 2)対象患者背景の均一化:無作為抽出が最適です。以前は封筒法などがありましたが、現在はインターネットを用いた無作為化が定番です。 3)試験実施者のみならず被験者もblinding もしくは maskingを必要。なぜならば被験者も薬物に対する知識、影響など知っている可能性があり、無意識に影響しうる因子を修飾し何らかの効果を与える可能性があります。そのためどちらもブラインド化されていることが望ましい、となります。一方で死亡といったハードエンドポイントであればブラインド化しなくてもいい場合があります。

デメリットはコントロールの薬剤を用意しなくてはならないことです。試験薬と同じ形態で作成しなくてはなりません。なぜなら医師、患者いずれもどちらの群に属しているか、文字通りダブルブラインドにしないといけないからですね。最もお金がかかり、注意も最高レベルにし、システマティックに行えないとエラーします。容易にRCTができない理由です。近年薬剤の新規開発が困難かつ経費もかかることからRCTは消えていくことになるといわれています。それにかわる方法も開発されていますが機会のあるときに触れましょう。

  • アウトカムの設定

ハードエンドポイント;誰がみても同じ結果。例えば死亡・心筋梗塞脳梗塞など。

ソフトエンドポイント;観察者間で異なる可能性を有するもの。例えば不安定狭心症の診断、入院など。

近年、急性冠症候群のカテーテル治療の効果が、特に我が国では著しく進化しているため同研究のアウトカムにハードエンドポイント;つまり死亡や心筋梗塞再発としてもイベント発生数があまりに低いため研究参加人数をとても多くしないと成り立たなくなっています。そこで複合エンドポイント;composite endpointという概念がうまれました。心血管イベント;MACE; major advanced cardiac endpointと呼んでいます。MACEには死亡、心筋梗塞、例えば血管再狭窄、なども含んで総じて、どーよ、と語ります。なかなか正直苦しいエンドポイントですが・・・・。

■サンプル数設定

一次エンドポイントに対してサンプル数を決定します。決定する際の必要要素は以下の3点です。1)α値、2)β値、3)イベント発生予測数。

α値;いわゆるp値です。0.05のことです。ソフトバンク日本ハムがデッドヒートしています。なーんにも野球を知らない人にどっちが強いか理解させるためには何連勝すれば伝わるでしょう?個人的には日ハムが好きですがたぶんソフトバンクのほうが強いでしょう。なので2連勝、3連勝、はたまた4連勝すれば理解してくれますか?4連勝する確率は0.5 x 0.5 x 0.5 x 0.5=0.625です。5連勝ならさらに0.5かけて0.03125となりました。つまり0.05以下ですね。5連勝すれば野球を全くしらない方にでもソフトバンクって強いんだなーって感覚的に理解してもらえる数字でした。だからp <0.05で有意なんです。時折論文でP<0.00001とかありますが、野球論でいえば10連勝ケースですね。でもそれって5連勝でも10連勝でもたぶんソフトバンクのほうが強いって思いません、どっちでも?だからわざわざこまかーなp値は見た目、みみっちい感じもしますしどうでもいい、ってすぐれた医師であり統計家でもあります森本剛先生はおっしゃっていました。

では続いてβ値。

これは検出力パワーともいいます。俗に有意さあるのにぼーっとして見逃してしまう、そんなことないように十分な確率で有意さを見逃さない数値をいいます。ぼーっとβ、って覚えるとよくネットに書いてあります。詳細もそれで参照してください。数値は80%が一般的です。本論文では90%とより厳格に設定しています。

最後のイベント発生率は過去の論文から引用します。なければご自身で先行研究を行えばいいでしょう。以上の3つの数値をネットでサンプル数設定とググれば計算式、でていますので、そこに入力すれば得られます。そうそう一個忘れていました。脱落数です。長い研究であれば脱落する登録者もでてきますね。長い研究はこういった点でも苦労が絶えません。

COPERNICS

 

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【背景】β遮断薬は現在の心不全治療の主流になり軽度心不全で、その位置は確立されています。

【Reserach Question】(研究開始当時)β遮断薬の心不全治療に効果的であるという試験は軽度から中程度心不全までで重症心不全患者を対象とした試験はなかった。果たして効果的か?

 【方法】21か国、334施設から計2289人の患者がエントリーしました。ランダム化二重盲試験です。カルベジロールを3.125mg b.i,dで開始し2週間ごとに6.25mg b.i.d, 12.5 mg b.i.d, 最終 25mg b.i.d.まで増量します。平均10.4か月の治療期間です。2年半あまりで試験中止の勧告がでました。追跡は60日後には来院していただきますが、半年後、1年後は電話、もしくはメールで確認します。

 @ Inclusion criteria

■ EF < 20%

■ 利尿剤、アルドステロン拮抗薬、ACEI/ARBを用いたガイドラインに推奨された内科的治療を行っている。

■ ラ音聴取、腹水の貯留などなく、せいぜい軽い下腿浮腫がある、程度にコントロールされていること。

■ 入院患者も登録できるが、カテコラミンや血管拡張剤の点滴加療されていないこと。また急性心不全症状を呈していないこと。

などです・

@ Exclusion criteria

■ 弁膜症

■ 心臓移植後

■ 重症な肺や腎臓、肝障害がある。

■ β遮断薬禁忌例

■ 不安定な血行動態、急性冠症候群や難治性不整脈などを有している。

■ α遮断薬、Ca拮抗薬、class I 抗不整脈薬をエントリー4週間以内に開始されている、もしくは2か月以内にβ遮断薬を開始されたケース。

■ クレアチニン 2.8 mg/dL以上

 

【評価項目】

一次評価項目;死亡

二次評価項目;死亡と入院(内容は心原性に限らず、いずれによる入院です)の複合項目

 

【統計処理】

■ カプランマイヤー生存曲線

■ Cox proportinal hazards regression model

■ サンプル数設定

プラセボ群1年後の死亡率を28%との先行研究からカルベジロール投与群;20%と見積もりα;5%, β; 90%で算出した。イベント率が高率になることが予測されたため死亡数が900例に達するまで本試験を継続する、とした。

■ 中間解析

O'Brien-Flemig法;以下を参照のこと。

Angiotensin-Neprilysin inhibitrorー新規心不全治療薬 NEJM2014 - 練馬で働く循環器医のブログ

 

【患者背景】

 

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平均年齢63才で男性が80%を占めます。短期間であったことからf/u 率も100%です。約65%は基礎疾患が虚血性で平均EFは20%を切っています。β遮断薬群は平均37mg/dayのカルベジロール量となりました。利尿剤、ACE-I/ARBの服薬率は90%超であるのに対し、アミオダロンやアルダクトン拮抗薬の服薬が20%前後ということは現在では少し考えられません。時代背景として認識すべきでしょう。

 

【結果】

 前述通り、中間解析の結果、2年半あまりで試験は打ち切りになりました。試験開始後4カ月の時点でカルベジロール群の平均服薬量は37mgに達しております。平均追跡期間は10.4か月で追跡率は100%でした。5%未満のカルベジロール群の患者は何らかの理由で同薬を服用していることが知らされています。

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Primary endpointのK-M 曲線(Figure 1)では有意にカルベジロール群の生存率が高いことが示されました。

プラセボ群;190名、カルベジロール群;130名がそれぞれ観察期間中にお亡くなりになりました。死亡率でみると、カルベジロール群で35%もの低下を認めました。NNTは 一方1年あたりでみますとプラセボ群;18.5%に対しカルベジロール群;11.4%の死亡率でした。NNT=1/(18.5-11.4)=14.1人に1人がカルベジロール服用で恩恵を被れるとなります。

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Figure 3は一個一個の変数について比較しております。女性、北米でなければ明らかにカルベジロール群が効果的です。

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死亡以外にも入院をいれた複合ポイントではすべてにおいてカルベジロール群の有意性が示されました。

 

最後にデメリットの面がないか検討しています。

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しかしプラセボ群24.2%が観察期間中、心不全の悪化をきたしましたが、、カルベジロール群では17.5%にとどまりました。

 

【私見】

carverirolのエビデンスは多くの論文で確定しており、特に本論文は重症の収縮機能の低下した心不全でも効果的であることを示しました。カルベジロールー心不全治療の重要なランドマーク論文です。

 

井上の読み方1;20160808

20160809

 

◼️ 最初に行うこと;4項目。

1)タイトルは論文の概要を読み取るために著者は一苦労しています。アブストラクトより短いこの一文で大まかな内容がわかるように仕上げております。

 

2)続いて著者一人一人の名前に目を通しましょう。1、2番目、それとラスト、ラス2著者は影響力が強い方々になります。

 

3)ついで施設名を確認していきます。多様性のある論文なのか否か読み取ることができます。

 

4)最後に最終ページ、conflict of interestに相当する箇所を確認し2)で確認した著者が利益相反に関してどのような状態か確認します。

 

◼️ アブストラクト

こちらはBackgroungとConclusionだけ読めばいいです。タイトルに加えてこの2点をよめば概略;どのような問題点に対して研究を行い、結果がどうだったか、が読み取れます。

 

下準備が上記のようにすんだら本文に入っていきましょう。

 

◼️ Introduction

自分の知識と論じられている題材について関連が少なければ、一読すると知識の整理などつきよい勉強になります。フェロー・レジデントは読む習慣をつけるといいでしょう。内容も多少知っているため、なんとなく私論文読んでいる感がいいモチベーションにつながることもありますね。冗談っぽいですが、私はそうでした・・・・。

 

◼️ Method

いつも3回連続で読むようにしています。論文の中核になります。じっくり読むのではなくさっと読みますが、でも3回は読んで内容理解に励みます。理解できなければ4回でも5回でも6回でも読み直し、理解できるまで次の項目にはいきません。そのくらい重要です。

じっくり解釈しながら読むことは勧めません。理由は疲れますし、結果最後までたどり着かないからです。さっと読み通す、これが大事です。2度目、3度目はスピードもあがってきますから先に進めないと慌てなくても大丈夫なんです。

 

冠動脈CTA検査と負荷心筋シンチなどの機能的検査の比較

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【背景】胸痛を訴える患者さんに対して、冠動脈疾患を有するか、否かを判定することは循環器医のみならず内科医としてとても重要です。見逃すと死亡率30%の心筋梗塞になりかねません。Diamond & Forresterの古典的な問診(すなわち性別・年齢・典型的胸痛かどうか)やFramingham scoreなどのリスクファクターからのアプローチから次に行うべき検査を考えます。通常なら負荷心電図検査を行いますが、ご高齢者や膝など運動機能の低下している場合や何より不安定狭心症を疑う場合は不適切な検査法となります。近年器具の進化の著しい冠動脈CTA検査は陰性的中率95-99%を誇る、虚血性心疾患を否定するためには強力な診断機器といえます。ただこれまで機能的検査(負か心筋シンチ・ドブタミン負荷エコー・エルゴメーターなどの負荷心電図)と直接的な比較は報告されていませんでした。

 

【Reserach Question】冠動脈CTAと機能的心臓検査は予後や放射線被ばく量にどのような影響を与えるか?

 

【方法】北米193施設から計10,003人の患者が2010-2013年の間にエントリーしました。ランダム化前向き研究です。2年間のフォローアップ予定でしたが、資金の影響で最低1年間という形になっております。追跡は60日後には来院していただきますが、半年後、1年後は電話、もしくはメールで確認します。

 @ Inclusion criteria

胸痛を有しており冠動脈疾患と過去に診断されたことがなく、かつ緊急性が乏しいが非侵襲性検査を必要とすると医師により判断された方々です。また54才以上の男性、64才以上の女性か、45-54才までの男性もしくは50-64才までの女性であれば冠動脈危険因子(糖尿病、高血圧症、喫煙、脳血管障害や末梢血管障害)を一つでも有すること。

@ Exclusion criteria

不安定な血行動態、急性冠症候群疑い、1年以内に冠動脈疾患の表がをされている、先天性疾患や弁膜症、心筋症などを有している。

 

【評価項目】

一次評価項目;複合項目;死亡、心筋梗塞、不安定狭心症による入院、CAG検査後72時間以内に発症した合併症(脳梗塞、大出血、腎不全、アレルギー)

二次評価項目;一時評価項目に加えて、CAGの結果有意狭窄がないこと、放射線被ばく(積算);90日後に評価

 

【患者背景】

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60才前後で男女比も半々でf/u 率も90%を超えています。65%の高血圧症に50%の喫煙とバックグラウンドもうなずける様相です。10年発症リスクも7.5%以上とでるコホートです。スタチン、アスピリンは45%程度の患者が服用しβ遮断薬は25%というのもイメージしやすいですね。

 

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【結果】

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Primary endpointのK-M 曲線からは有意な差が得られませんでした。HR 1.04 (0.83-1.29)。ただ放射線被ばくはcoronary CTA郡で有意に多いとなります(12 mSv vs 14 mSv)。CXP; 0.05 mSv, Ba swarrow; 2mSv、放射線従事者が規定されている年間被ばく量が50 mSvです。一方でcoronary CTA郡では有意に有意狭窄のない冠動脈疾患を有する患者を検出しています (3.4% vs 4.3%)。冠動脈造影検査は入院が必要で、最低でも1泊2日、通常2泊3日はかかります。費用も、保険適用で3割負担の場合でも検査だけで約10万円、入院費などを含めると12~15万円かかります。また、動脈にカテーテルを挿入するため、まれなケースではありますが、カテーテルが血管を傷つけたり、脳梗塞心筋梗塞などの合併症によって患者さんが亡くなりえます。対して冠動脈CT検査は、検査費等込みで、保険適用(3割負担)で約1万円程度ですみます。

【私見】

適切な検査の選択はいうまでもありませんが否定するための検査であればcoronary CTA、治療を必要とするかもしれない、と思われるケースではマスターダブル負荷心電図で陰性を確認したあとの負荷心筋シンチグラフィー検査という考えで私は対応しています。

 

V-AECMO症例の予後予測アルゴリズムーSAVE scoreの意義ー

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【背景】循環器領域で使用するECMOはPCPS (percutaneus cardiopulmonary system)という呼称のほうが一般的なようです。ただし正確にはV-A ECMOといいます。Veno-Atrial ECMOです。アクセスする血管でV-V ECMOなどもあるわけです。心肺停止の際、最終手段として大変重要な装置ですが、対象となる病態が重症であるがゆえに救命ができないケースも少なくありません。同時にマンパワーやコストパフォーマンスを考慮しなければなりません。そのためには適切な予後予測アルゴリズムは必要です。

SAVE-scoreは以前から知られたアルゴリズムですが小規模のデータしかないことが問題でした。そこで本研究は米国から160施設、他国から120施設が登録しているレジストリー(The Extracorporeal Life Support Organization)からSAVE scoreを確認したのち、オーストラリア1施設ですが、同スコアの有効性を確認する2本立ての研究で構成されています。

 

【Reserach Question】SAVE scoreは有効か?

 

【方法】過去レジストリーの後ろ向き解析とそこから得られたSAVE scoreの確からしさを前向き解析で確認するといった2本立ての研究構成です。後ろ向き研究はさらに3種類に分けています。

 

Step 1; SAVE score 13項目と予後との関係を確認する。

Step 2; 重回帰分析 (multiple logistic analysis)をbootstrapping法(ランダムに抽出したものの中で平均値、中央値を調べる。それを何回も繰り返して変数のばらつきを俯瞰する方法。そのばらつきを示す残差の平方和が最小になるよう回帰式のx切片とy切片を求める。

Step 3; 多重ロジスティック解析を行い有効性を確認しROC解析から導きだされた診断効率を求める。

Step 4; 前向き検討としてオーストリラリアのICUでSAVE scoreの有効性を検証する。

 

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@ Inclusion criteria

V-A ECMOが導入された心原性ショック症例。原因は弁膜症、心移植後、先天性心疾患、大動脈疾患、急性心筋梗塞、劇症型心筋炎、肺塞栓症敗血症、コントロール不良なVT/VF症例

@ Exclusion criteria

CPR蘇生後症例。呼吸不全症例。

 

【評価項目】SAVE scoreの変数。

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【患者背景】

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【結果】

登録者3864名(平均年齢54歳で67%は男性)のうち1601名(42%)が生存、退院しています。疾患内訳は33%に慢性腎機能障害、29%は急性心筋梗塞、17%に弁膜症が占め、V-A ECMO開始前に心停止をきたした症例は32%占めています。

 

下図は予後予測変数をオッズ比で表しています。

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慢性腎不全、V-A ECMO開始までに人工呼吸器管理が長期間に及んだケースや臓器障害、心停止をきたしたケース、先天性心疾患、脈圧 < 20 mmHg、HCO3低値は予後が悪いことがわかります。

 

逆に38歳以下、76-89kgの方、急性心筋炎、コントロール不良なVT/VF、拡張期血圧が保たれている(40mmHg以上)ケースの予後は良好でした。

 

 

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ROC解析結果からやはり確率されているICU患者の予後予測アルゴリズムでありますSOFAやAPACHEよりもSAVE scoreは上回っています。

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SOFA scoreとはSequential Organ Failure Assessment Scoreのことで, 多臓器不全の評価に使用されます(JAMA 2001;286:1754-58)

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APACHE (Acute Physiological and chronic health evaluation)scoreはII-IVまでありますがIIが汎用性があります。IIIは経時的変化も要素に含んでいます。書きにIIを示します。引用元はメルクです。

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Table 5はSAVE scoreの層別化と疾患別の予後を表しています。score値を5群に分けるとclass IからVまでは75%, 58%, 42%, 30%, 18%のmortalityとなります。

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【参考資料】

http://www.save-score.com/